国の医療費の抑制策として、たびたび話題になるジェネリック医薬品(後発薬)。欧米では使用される医療用医薬品の6割以上がジェネリックに対し、日本では2~3割にとどまっている。保険制度の違いがあるとはいえ、ジェネリックを「先発医薬品(新薬)より安いのは効果がないからでは?」「副作用が心配」などと否定的に思う人が少なくないことも影響しているようだ。どういう薬か知って利用すれば薬代の節約になりそうだ。(平沢裕子)
ジェネリックは、先発薬の特許期間(20~25年)などが過ぎた後、他メーカーが製造・販売する、同じ有効成分・同じ効き目の医薬品。価格が安いのは、研究開発費が先発薬に比べて大幅に少なくて済むためだ。
◆同じでも個人差
しかし、ジェネリックは先発薬と全く同じ薬ではない。同じでなければならないのは、(1)有効成分の種類・量(2)用法・用量(3)効能・効果-の3つ。これらがそろって初めて国から使用が認められる。
一方で、薬の形や色、味、添加物など医薬品の有効性と安全性に影響を及ぼさない部分は異なっている。全く同じでないことで効果を疑問視する人もいる。
しかし、慶応大学薬学部の黒川達夫教授は「お酒を飲んだときに少量で酔う人とそうでない人がいるように薬の効き目にも個人差がある。その幅は4~32倍と思ったより大きく、個人ごとのさじ加減の方が先発薬とジェネリックの違いよりよほど重要」と指摘する。
先発薬からジェネリックに代えると、どのくらい金額が違うのか。
日本ジェネリック製薬協会(東京都中央区)のホームページでは、先発薬をジェネリックに代えたときの差額を瞬時に計算してくれる「かんたん差額計算」のコーナーを設置。今使っている先発薬の名前と服用回数・日数を入力すれば、ジェネリックに代えた場合にどれだけ安くなるかが分かる。
例えば、高血圧の治療で使われるアムロジン(5ミリグラム)をジェネリックに代えた場合、薬剤費の差額は最大、1カ月(30日)で1260円、1年(365日)では1万5330円。ただ、個人が窓口で払うのは3割負担で最も高いものが1カ月で378円、1年で4599円。1カ月でコーヒー1杯分と考えれば、「先発薬のままでいいか」と思うかもしれない。
◆長期の費用削減
しかし、「高血圧薬や高脂血症薬は人によっては一生飲み続けるもの。たとえ1カ月でコーヒー1杯の金額にすぎなくても、10年、20年たてば、かなりの金額になる。先発薬を長年飲み続けている人は変更するのは不安かもしれない。また、多少の調整期間も必要で面倒だが、今後の経済的負担を考えれば検討する価値はあるのでは」と黒川教授は話す。
ジェネリックの中には味や大きさ、溶け方などを工夫し、より飲みやすくしたものもある。ジェネリックを処方してもらうには、かかりつけ医に相談し、変更が可能ならば、薬剤師に処方箋を渡す際にジェネリックを希望していることを伝えてみよう。
黒川教授は「ジェネリックの特性をよく理解し、納得したうえで活用してほしい」と呼び掛けている。
■厳しい基準のもとで製造・販売
ジェネリックがなかなか普及しない理由の一つに、品質への不信感が医師らの間で根強いことがある。黒川教授も「今から約40年前のジェネリックは確かに品質が良くないものがあり、医師は自分の患者に使うのを嫌がった」と振り返る。
しかし、今は医療用医薬品は先発薬もジェネリックも全て国が定めた品質管理基準などに基づいて製造・販売されている。先発薬と治療効果が同等かを保証するために医薬品の血中濃度推移などを見る「生物学的同等性試験」も行っており、これをクリアしないと製造・販売はできない。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20130205515.html