[ カテゴリー:子育て, 社会 ]

わが子がケガをさせた友人に障害が残ったら

PRESIDENT 2011年1月17日号 掲載

■将来の逸失利益は数千万円になる

子供が友達に、ケガをさせてしまった……。こんなときは何をおいても、すぐお見舞いや謝罪に行くべきです。障害が残るような大ケガであればなおのこと。子供や友人、学校からざっと情報を収集したら、できるだけ早く駆けつけてください。

なぜなら相手の親にしてみれば、ケガをしたその日に顔を見せるのと、1週間後に腰を上げるのとでは、謝罪の重みが違う。時間がたてばたつほど相手側の被害感情は高まり、問題解決にマイナスとなります。第一報を聞いてすぐに飛んでいき、その後も頻繁に見舞ったり電話したりしていれば、関係は続いていく。それをせずにいきなり弁護士を立てたり、すべて学校に押しつけたりしていては、今後の話し合いがうまくいくわけがない。

とはいえこちらにも、「ケガをした子のほうが先にケンカをしかけてきた」とか、「学校の設備に問題があった」などの言い分があるかもしれません。しかし詳しい原因や責任の度合いなどは、あとから追及すればいいのです。謝ることと、非を認めることは同じではありません。「治療費や慰謝料については、事情を調べてから、できる限りのことをさせていただきます」でいい。まずは謝罪で、原因究明や損害賠償の話はそのあとです。

法律的な観点からこのようなケースを考えてみると、加害児童の年齢や、事件・事故がどこで起こったかによってとらえ方が変わってきます。

まず子供の年齢ですが、小学生くらいまでは誰かにケガをさせても「責任能力なし」とされることがほとんど。その代わり親権者が責任を負います。中学生以上になると「責任能力あり」とされることが多いのですが、治療費その他の損害賠償となると、やはり親が事実上引き受けることになります。

次に事件・事故が保育園・幼稚園や学校で起こったのならば、園や学校には安全配慮義務や注意義務がありますので、責任を追及することができます。私立であれば園や学校、あるいは先生個人に、公立であれば市町村や都道府県に対して損害賠償を求めることになります。学校が日本スポーツ振興センターなどの共済制度に加入していれば、保険金が下りることもあるので確認してください。

しかし学校・園に責任を追及できない場合もある。そんなときは親が治療費や入院費などの実費に加えて、慰謝料を払うことになります。これらの損害賠償については、交通事故の損害賠償の分野でケガの重さや治療内容・期間による基準が確立しているので、これにならいます。

治療費や入通院に伴う慰謝料は大した金額ではありません。問題は障害が残ったときの「将来の逸失利益」です。つまり被害者側は、「障害がなければふつうに働いて得られたであろう一生分の賃金」を、加害者側に対して一括請求することができる。これは当然のことながら、何千万円という金額になります。親自身が賠償責任保険や特約に加入していなければ悲惨です。

子供同士がふざけたりケンカをしたりして、友達にケガをさせてしまうのは決して珍しいことではありません。鉛筆を振り回していたら目に当たって失明させたというケースもある。

私にも6歳の息子がいますが、集団生活を送っていればトラブルは当たり前。賠償責任保険に加入しておくなどのリスク回避は、いわば「生活の知恵」です。他人にケガをさせる恐れがあるような活発な子であれば、なおさら学校とよく連絡をとりあい、そういうことが起きないよう、日ごろから注意しておくことは欠かせないでしょう。

※すべて雑誌掲載当時

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ヒューマンネットワーク 中村総合法律事務所 
好川久治

1969年生まれ。東京大学法学部卒。大手保険会社を経て現職。交通事故、消費者被害、労働事件等を取り扱う。

 

http://news.goo.ne.jp/article/president/life/education/president_8326.html

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