漫画家のさかもと未明さん(47)が飛行機内で泣き続ける乳児に我慢できず、乳児の母親などにクレームをつけたことが論議となっている。さかもとさんは「もう少し大きくなるまで飛行機に乗せてはいけません」と母親を諭したというが、引っ越しなどやむを得ず乳児を飛行機に乗せなければいけない場合もある。また、「気圧の変化など大人でもつらいのに乳児は大丈夫?」との指摘も親にとっては気になるところ。乳児のことを考えれば飛行機には乗せない方がいいのだろうか。
ガスでおなか膨張
雑誌『Voice』の12月号にさかもとさんが寄せた原稿によると、泣き叫ぶ乳児に腹を立てたのは愛媛・松山から羽田空港に向かう飛行機内。1歳くらいの乳児が離陸直後から泣き叫び通し、客室乗務員と母親があやしても泣きやむ気配はなかった。機内で乳児が泣きやまないことは珍しくなく、同様の経験をした人も多いのではないだろうか。
群馬県立小児医療センター新生児科第二内科の丸山憲一部長は「飛行機に乗ることは赤ちゃんにとってあまり快適とはいえない」と指摘し、その理由に気圧や気温の変化を挙げる。
離陸時に耳痛や耳鳴りを経験したことのある人は少なくないが、これは機内の気圧が急激に下がることで耳の外と中に気圧差が生じるためだ。大人の場合、つばを飲み込むなど無意識にあごを動かすことで気圧調整しているが、乳児はこれが上手にできない。
また、気圧の変化で胃や腸の中のガスが膨張し、おなかが張りやすくなる。「一般に赤ちゃんは大人に比べて胃や腸の中のガスが多い。大人より不快感が高い可能性があり、それで不機嫌になっているのかもしれない」と丸山部長。
さらに機内は、常に「ゴー」という騒音がある▽寒い▽自分の好きな姿勢が取りにくい▽動けない▽大勢の人が狭い空間に閉じ込められている状況の不安-など日常とは異なることがストレスとなっている可能性もある。
疲れて眠らせる
こうした状況を考えると乳児が泣くのは仕方ないことだが、対処法がないわけではない。離陸直後など気圧の変化による耳痛・耳鳴りが原因で泣いている場合は、母乳やミルク、水などを飲ませる。それ以外の理由で泣いている場合、6カ月未満の乳児ならば、母乳やミルクを与える、抱っこしてあやすなどするといい。
ただ、さかもとさんが遭遇した1歳ぐらいの乳児の場合、母乳や抱っこでは効果がない可能性もある。飛行機に乗ってから何かをするより、搭乗後に疲れて寝てしまうように搭乗前に時間調整をして遊んであげるなどの工夫も必要だ。
年末年始にかけて、帰省などで飛行機も家族連れが増える。保護者は機内で乳児が快適に過ごせるような工夫をし、また、乗り合わせた人は「赤ちゃんは泣くのが仕事」ぐらいに思って見守ってあげてはどうだろう。
■睡眠薬はだめ、副作用の恐れ
さかもとさんは、医師である夫の意見として「子供の健康に害のない抗アレルギー剤などその子にあった眠気を誘う薬を用いるなどの工夫はできるかも」とし、遠足バスで酔い止め薬を飲むのと同様にマナーとして薬の利用を提案している。
市販の睡眠薬には抗アレルギー薬として使われてきた成分が入っているものもある。ただ、15歳未満の子供への服用は禁止だ。丸山部長も「赤ちゃんに睡眠薬を飲ませた場合、無呼吸などの重大な副作用を起こす危険がある。飛行機に乗るために飲ませるのは医師としてお勧めできない」と話している。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/121205/edc12120507590001-n1.htm
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