[ カテゴリー:医療, 社会 ]

「尊厳死」法制化に賛否

尊厳死法案が議員立法によって国会に提出されようとしています。終末期に延命措置を行わなくても、それが本人の意思なら医師は責任を免れる、と定めるものですが、尊厳死とは具体的にどんなもので、なぜ法制化の必要があるのでしょうか。

■「患者の意思」どう生かすか

――尊厳死と安楽死は、どう違うのですか。

「安楽死は、肉体的・精神的苦痛から解放するため、薬物投与などで人為的に死を早めることです。尊厳死は海外では安楽死と同じ意味で使う場合がありますが、日本では、〈本人の意思に従って延命措置を控えたり、中止したりした結果による死〉との位置づけです。積極的に死を早めてはいないため、『消極的安楽死』とも言われます。このような死をどこまで認めるかは、倫理や文化、死生観が関わる難しい問題です」

――安楽死や尊厳死を法律で認めた国はあるのですか。

「いわゆる『安楽死法』があるのは、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの欧州3か国だけ。フランスは安楽死は認めていませんが、尊厳死は法律で認めました。日本は、安楽死については、許容要件が判例で示されたことがあるものの、法的にも社会的にも認める動きはありません」

「問題は尊厳死です。延命措置を控えたり、中止したりすることは、現実の医療現場では少なからず行われています。しかし、どんな場合が認められるのか、明確なルールがない、いわば『グレーゾーン』になっているからです」

――誰が尊厳死の法制化を強く訴えているのですか。

「尊厳死の普及や啓発を行っている日本尊厳死協会(約12万5000人)です。会員は、治療のすべなく死が迫ったり、持続的な植物状態になったりした時には延命措置を拒否するという宣言に署名し、会員証を携帯します。終末期医療に関する希望を書類に残しておくリビングウィルの一種です。法的効力はないため、罪に問われることを恐れる医師が、それに従わないこともあります」

「そこで同協会は2005年、14万人の署名を添えて尊厳死の法制化を国会に請願し、それを受けて超党派の国会議員が『尊厳死法制化を考える議員連盟』を作りました。議論を重ねて今年3月に法案を公表し、国会提出を目指しています」

「社会的背景としては、医師による人工呼吸器外し事件や胃ろう(腹部の穴から栄養剤を直接注入する方法)の急増など終末期医療を巡る問題に関心が高まったことがあります。医療者側の都合だけでなく、患者本人の意思を最期のときにどう生かすかが、大きな課題になってきたわけです」

――法案の内容は。

「終末期を『適切なすべての医療措置を受けても回復の可能性がなく、死が間近と判定された状態』と定義し、医師2人以上で判定するとしました。そして15歳以上の患者が終末期の延命措置を拒否する意思を書面に残していれば、それに従った医師は法的責任も行政上の責任も問われません。法案は2案あり、第1案は延命措置を開始しないことに限定し、第2案は延命措置の中止も含めました」

――法案に対する関係団体の反応はいかがですか。

「日本尊厳死協会は『法律ができれば、医師は不安なく患者の意思を尊重できる』と賛成していますが、障害者や難病患者の団体、日本弁護士連合会などは反対の立場です。『法制化は国が尊厳死を勧めることになり、社会的弱者の生存を脅かす』『人の死に国家が介入するな』などの批判があります。法案の中身についても『終末期は正確には分からない』『過去に書いたリビングウィルが現在の本人の意思と言えるのか』などの問題点が指摘されています」

「日本医師会(日医)も慎重です。終末期医療については厚生労働省や日医、複数の学会が指針などを作り、医師の免責こそ保障されないものの、延命措置の差し控えや中止を認めています。日医は『終末期医療の現場は多様で、法律で縛って混乱を招くより、緩やかな指針の方が望ましい』としています」

「今の終末期医療が多くの問題を抱えていることは確かです。その解決策としての『尊厳死の法制化』については、十分な議論が必要です」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121029-00000301-yomidr-soci

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