山中伸弥さんのノーベル賞受賞には難病患者やその関係者からも祝福の声が上がった。患者の遺伝情報を持ったiPS細胞の研究が進めば、難病の原因や治療法などが解明される可能性があるからだ。
「受賞がきっかけで研究が進み、難病を治す薬ができたらうれしい」と今後の研究に期待を寄せたのは、山中さんが所長をつとめる京都大iPS細胞研究所に皮膚の一部を提供し、難病治療薬開発に協力する兵庫県明石市の市立魚住中3年、山本育海(いくみ)さん(14)。
育海さんは平成18年9月、筋肉が骨に変わる200万人に1人の難病「進行性骨化性線維異形成症」(FOP)と診断された。骨を形成する遺伝子の変異が関係しているが、メカニズムは解明されておらず、治療法も特効薬もない。21年秋、育海さんは山中さんに「僕の細胞でiPS細胞を作って治療法を見つけてください」と申し出た。山中さんはこれを受け同研究所でFOP研究チームを発足。現在は育海さんの皮膚から作ったiPS細胞で細胞の骨化を防ぐ化合物の検討を進めている。
明石市役所で8日、記者会見した育海さんは、山中教授の受賞を「先生はすごいね」と喜び、母親の智子さんは「山中先生は私たち親子にとってさらに大きな存在になりました。iPSにもっともっと光が当たりiPS創薬が進むことに期待しています」と話した。
独立行政法人科学技術振興機構の中村道治理事長は「難病の原因を解明することにより、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの治療への展開が進む。加齢が原因で起こる加齢黄斑変性という目の病気で世界初の臨床研究が日本で計画されるなど、自らの細胞による『夢の再生治療』が実現しようとしている」とコメントを出した。
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