妊婦の血液を調べるだけで、胎児にダウン症などの染色体異常があるかどうかほぼ確実に分かる新しい出生前診断について、日本産科婦人科学会(小西郁生理事長)は1日、検査が広く一般に行われると社会に大きな混乱を招く可能性があるとして「安易な実施は厳に慎むべきだ」とする声明を発表した。また、新診断法に関するガイドラインについては、日本医学会や関連学会と連携しながら検討していく方針を示した。
声明では、新診断法をはじめとした新たな分子遺伝学的検査には専門的知識が求められるとした上で、妊婦が検査の意味を理解したり、結果が出た後のサポートを行ったりするため「専門家によるカウンセリングが必須」と強調。社会に大きな混乱を招く懸念があるとして遺伝子異常のリスクが低い妊婦など広範囲への実施は慎むべきだとした。
さらに、学会として適切な運用を検討している最中だとして、新診断法を慎重に取り扱う必要があることへの理解を求める一方、遺伝子の変化に基づく疾患などを「人の多様性として理解し、その多様性と独自性を尊重する姿勢で臨むことが重要」と訴えた。
新診断法は、妊婦からの採血だけでできるため、産婦人科医以外の医師も実施が可能になる。そのため、学会はガイドライン作成にあたり、「さまざまな分野の医療関係者からも意見を求めたい」として、日本医学会や関連学会とも連携、ガイドライン作りに向けた検討会の設置を打診していくという。
日本産科婦人科学会倫理委員会の落合和徳委員長は「国には(出生前診断に関する)法整備も訴えていきたい」と話している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120902-00000067-san-soci