全国の児童相談所が平成22年度に対応した虐待相談の件数は5万5152件(速報値)で、集計を開始した2年度から20年連続で増加し、過去最多を更新したことが20日、厚生労働省のまとめで分かった。厚労省は、「大きな虐待事件の影響で社会の関心が高まり、相談や通報が増えた」とみている。
今回は東日本大震災で被災した宮城、福島両県と仙台市を除いて集計しており、3自治体を除く数値を前年度と比較すると28・1%(1万2090件)増。都道府県別では大阪府が最も多く7646件、次いで神奈川県の7466件、東京都の4450件と続いた。
20年4月施行の改正児童虐待防止法で児童相談所の権限が大幅に強化され、虐待の恐れがある家庭に児童相談所が強制的に立ち入り調査(臨検)もできるようになったが、実施は前年度から1件増の2件にとどまった。うち1件は、持病のある子供を医療機関に受診させないなど、ネグレクト(育児放棄)が疑われたケースで、立ち入り後は受診に児童相談所が同行することになった。
改正法では相談に応じない親に都道府県知事が出す「出頭要求」も出せるようになり、22年度は50件(児童数延べ72人)で、前年度の21件(同25人)から倍増。要求に応じず、再び出頭要求したケースも6件(同7人)と前年度の2件(同2人)から大幅に増えた。厚労省は「新制度の活用を呼びかけた効果が出ている」とみている。
また、21年度の虐待による死亡事例は、前年度の107件(128人)から77件(88人)へと減少したことが同日、児童虐待を検証する厚労省の専門委員会(座長・才村純関西学院大教授)の分析で分かった。
うち心中と心中未遂を除く47件(49人)で、児童相談所が事前に関わっていたケースが12件あることも判明。子供49人のうち身体的虐待は29人、ネグレクトが19人、不明が1人だった。
厚労省は「単年度で見れば死亡例は減少しているが、相談件数は増加しており、虐待そのものも増えているという指摘もある」として、依然厳しい状況にあるとの見方を示している。
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