◇現金の方がベター--がれき撤去、山下さん
県内では14日、東日本大震災の被災地への支援の動きが広がった。一方、計画停電による混乱や、節電への動きも出てきた。
12日から被災地でボランティア活動を行っている甲府市のNPO法人「災害・防災ボランティア未来会」の山下博史代表(44)が14日に県内に戻り、「山梨県の人も、今回の震災を自分に置き換えて備えとしてほしい」と訴えた。
未来会は国の要請を受けて、仙台市や福島県などでがれきの撤去作業や医療活動を実施した。遺体200人以上が見つかったとされる仙台市若林区に入ると、田んぼに家が浮いた状態で、がれきの撤去作業中に遺体が見えた。
04年に大津波で多数の死者を出したインドネシア・スマトラ沖大地震の被災地にも支援に行った経験がある山下代表は「今回の方がひどい。想定以上だった」と話した上で、「ボランティアの初心者が思いつきで行ける状態ではない」と指摘した。また、支援物資を送る場合には「現金の方が現地で必要な物の購入に充てやすい」とアドバイスした。
未来会では今後も、全国各地にいるメンバーが交代で現地入りし、活動を行う。未来会への救援金は甲府信用金庫大里支店・普通口座0156101まで。【小林悠太】
◇県議会冒頭で犠牲者に黙とう
県議会は2月定例県議会最終日の14日、本会議冒頭、出席者全員で犠牲者に黙とうをささげた。国に対し、被災住民の安全や物資の輸送路の確保など、復旧復興に向けた取り組みを求める意見書を可決した。
横内正明知事は閉会前に「今後とも国や関係機関と連携しながら救援活動を展開していく」と述べ、計画停電について「県民生活への影響が最小限にとどまるよう万全を期す」と県民に理解と協力を求めた。
◇炊事・給水車、茨城へ出発--陸自北富士駐屯地
陸上自衛隊北富士駐屯地(忍野村)は14日、第1特科隊49人が炊事車2台、給水車6台など計17台で、茨城県ひたちなか市の陸自勝田駐屯地に向けて出発した。隊員は救助用機材や水、食料、野営用設備などを携行。同県内で炊き出しによる被災者への食事の提供や給水支援にあたる。
◇仮設住宅の建設、内装業者申し出
県内の内装業者らでつくる「県鋼製下地ボード技能士会」の大柳泰彦理事(59)が県ボランティア協会に支援を申し出た。
技能士会は新潟県中越沖地震(07年)などでも有志がボランティアとして現地で約2週間、仮設住宅の建設に携わり、大柳理事は被災者から「一刻も早く入居したい」「寝る場所がほしい」という声を聞いた。今回も地震について大柳理事は「我々の技術が役に立つならばいち早く出向きたい」と話している。
◇県内も混乱続く 医療機器、死活問題--計画停電
■在宅患者
計画停電の実施は、自宅で医療機器を使う在宅患者にとって命にかかわる。
中央市東花輪の大木喬作(きょうさく)さん(67)の妻郁子さん(63)は、全身の筋肉が動かなくなる難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患い、7年前から自宅で人工呼吸器を使用している。停電時に充電式バッテリーで賄える時間は6~8時間が限度だ。
11日の地震発生~12日未明の停電ではバッテリーが持たず、山梨大医学部付属病院に緊急入院。復旧後に帰宅したが、常に停電の恐怖が頭を離れない。
計画停電について大木さんは「突発的に停電になるのではなく、事前に3時間だけと分かっているから安心」と理解を示す。ただ、14日は中央市では停電はなかったものの、充電の準備に追われた。大木さんは「停電の時間帯予定を1週間分くらい示してもらえれば」と話している。
日本ALS協会山梨県支部によると、県内で、呼吸器を付けている患者は十数人。ALS以外で、呼吸器を使用する在宅患者も多い。地震後、患者宅を巡回している同支部の看護師、広住江美子さんは「呼吸器は命をつなぐ装置。事前の情報提供が最も重要」と話していた。
◇午後5~6時半、4町で計画停電
14日午後7時現在、県内では、市川三郷町と早川町の一部、身延町、南部町で計画停電が実施された。午後5時から約1時間半、各家庭や信号機などの電気が消えた。
県や町、県警などによると、交通量の多い交差点には警察官が立って手信号で交通整備にあたるなどし、目立った混乱はなかった。峡南地域の拠点病院の組合立飯富病院(身延町)では、予定通り自家発電が作動。停電前にエレベーターを停止させたり、看護師らが入院患者に停電について説明するなどして対応した。
東電によると、当初は同7時ごろまでの停電を予定したが、消灯後に供給力に余裕があると判断したため、予定時間より早く送電を再開した。
■休業
計画停電に伴い、富士急行は富士吉田市の遊園地「富士急ハイランド」を15~18日臨時休園すると発表した。
企業にも影響が及んだ。半導体製造装置会社「東京エレクトロンAT」(韮崎市)は、計画停電が予定されていた午後の3時間、半導体製造装置の製造を停止した。15日以降も計画停電の予定時間中は製造停止の予定。
■県警・消防
県警は計画停電に備えて、信号機のある交差点付近に警察官を配置するなど態勢を取った。県警交通規制課によると、県内に信号機のある交差点は約1800カ所あり、約9割が停電対象。うち2割では、自家発電で信号を作動させるか、警察官が交通整理にあたるが、それ以外の場所ではパトカーで巡回するなどして注意を呼びかけることにしている。同課は「譲り合いの精神で安全かつ円滑な運転を心がけてほしい」と話している。
甲府地区消防本部は「停電時には電源だけでなくコンセントを抜くようにしてほしい」と、計画停電の際の注意を呼び掛けている。ストーブやアイロン、ドライヤーなど家電製品の電源が入ったままだったため、停電復旧後に火災が起こった例もあるという。
■役所
計画停電の実施に備え、県庁や市役所も対策に追われた。県庁本館では、廊下やトイレの照明を消し、エレベーター2台のうち終日1台運行とした。当面の間、続ける方針。甲府市は午後1時半から約4時間、市各窓口での証明書の発行業務を停止。相生仮本庁舎以外の窓口を今後、停電予定時間帯に合わせて業務を停止する予定。相生仮本庁舎では非常用電源が確保でき次第、業務を続ける。
■商業施設
商業施設も対応に追われた。甲斐市のショッピングセンター「ラザウオーク甲斐双葉」では、停電予定の午後0時10分~同4時40分、営業を停止。来店した客には店員が事情を説明する場面も。同店は「多少の混乱はあっても、できる限り節電したい」としている。甲府市の岡島百貨店や昭和町の「イオンモール甲府昭和」も同様に営業を中断。15日以降も停電予定の時間帯以外は、営業する予定。
停電が午前10時からの予定だった南アルプス市のスーパー「マックスバリュ白根店」では、停電が回避をされたため通常通り営業。15日以降も計画停電の実施状況に合わせて営業する。
一方、甲府市の「くろがねや住吉店」では11日夕から防災用品を求める客が相次いだ。約200本あった懐中電灯は完売。12日朝に入荷した90本も午前中に売り切れた。乾電池や携帯ラジオなども品薄。神宮司将一店長は「入荷のめどもたたない」と話している。
甲府市のガソリンスタンド「吉字屋本店ASKアルプス通りプラザSS」では13日以降、1台15リットルに給油を制限。14日朝からはレギュラーガソリンで1台1000円分(約6リットル)の販売に限定している。地下にあるタンクはハイオクガソリン、レギュラーガソリン各約3万リットル分の容量があるが、既に半分以下の状況だという。
■交通
JR中央線と身延線、富士急行線では、一部電車が運休するなど影響が続いた。中央線は午後2時ごろ、上下線で普通電車が再開したが、運転率は50%ほどという。東京・新宿でインテリアショップを経営する市川三郷町市川大門の渡辺峯雄さん(63)は「今日も店を開けなければいけない。朝、運休を知って急きょバスで行くことにした」と高速バスの列に並んでいた。
一方、県県土整備部は、節電のために、交差点や横断歩道を除いて道路照明を消す▽トンネル内の点灯数を減らすことを発表した。
学校の授業にも影響が出た。県教委によると、公立中学・高校・特別支援学校の計11校が休校になり、小学~高校計66校が終業を早め、高校2校が始業を遅らせた。県私学文書課によると、山梨英和中・高も臨時休校。日本航空高・同付属中が17日に予定していた後期終業式を14日に実施。身延山高が午後の授業を取りやめ、富士学苑中・高が4校時終了後に下校とし、帝京第三高が自宅学習措置となった。
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東京電力山梨支店は、停電時の注意点を発表した。
【ストーブなど電熱器具】火災の原因になるため、コンセントからプラグを抜く。
【パソコンなどOA機器】停電前にデータを保存し、電源を切る。
【水道水】集合住宅は使えない可能性もあり。停電後に濁り水が出ることも。
【エレベーター】停電中は使用できない。停電前にスイッチを切り、運転できない状態にする。
【電話】機種によっては使用できない。コードレス電話は使用できない。
【冷蔵庫】業務用ではドライアイスなどを用意。家庭用はなるべく扉を開けずに。
【時計】停電後、再調整が必要。タイマーは取り消しになる場合も。
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