医療機関ネットワーク(注1)には12歳以下の事故情報が23,781件(注2)寄せられており、そのうち0・1・2歳児の事故情報は12,484件で約5割を占めています。
子どもの事故は、年齢や発達の程度により事故の内容が異なります。3~4カ月になると首がすわり、4カ月になると手に触れるものは握ったり、振ったり舐(な)めたりして遊ぶようになり、足をバタバタしたりして身体の移動がみられます。また、生後6~11カ月になると寝返り、お座り、ハイハイ、つかまり立ちが徐々に可能になり、指で物を上手につかむことができるようになり、何でも口に持っていきます。この頃は発達も早く、昨日までできなかったことが急にできるようになることから、対応が遅れがちになるとされています。さらに、1~2歳では1人で歩行できるようになり、行動範囲もますます広くなり、事故が多発するようになります。一方、3歳以上になると、走ったり、活発な動きをするようになり、この年代の事故を防止するには保護者等の気配りだけではなく、社会による環境整備と子どもへの安全教育が必要とされています。(注3)
このような発達段階と行動パターンの特徴を踏まえ、医療機関ネットワークに寄せられた0・1・2歳児の事故情報を分析し、事故防止のために保護者の方等が注意すべき点をまとめました。
- (注1)消費者庁と国民生活センターとの共同事業で、消費生活において生命または身体に被害が生じた事故に遭い、参画医療機関を受診したことによる事故情報を収集するもので、2010年12月から運用を開始しました。
- (注2)2010年12月以降、2015年11月30日までの伝送分。
- (注3)(参考)「新 子どもの事故防止マニュアル 改訂第3版」株式会社診断と治療社 発行
0・1・2歳児の事故情報の傾向と特徴
年齢別件数と危害の程度
1歳児の事故が最も多く、0~2歳児全体の4割を超えている
事故の傾向
事故の傾向としては「転落」「転倒」「誤飲・誤嚥(ごえん)(注4)」が多く、発達との関係もみられる
- (注4)誤嚥:食べ物・飲み物の飲み込みがうまくいかず、食道ではなく気管に入ってしまうこと。
「転落」による事故
最も多いのが転落事故、0歳は「ベッド類」、1・2歳は「階段」からが第1位
- 【事例】大人用ベッドに寝かせたところ壁とベッドの隙間に転落
- 大人用ベッドに寝かしつけ寝室を離れた。再び寝室に入ったところ壁とベッドの隙間に挟まるように転落し呼吸がなかった。
- (2013年9月発生 5カ月、女児、重篤)
- 【事例】ベビーゲートが外れ階段から転落
- 2階にあるリビングには、ドアや廊下がなく、すぐに階段がある。階段にはベビーゲートを設置していたが、ガチャガチャしているうちに外れてしまい、13段転落し、前額部打撲。
- (2015年11月発生 1歳7カ月、女児、軽症)
「転倒」による事故
0・1・2歳とも「机・テーブル類」が上位、1歳から「自転車」が増加
- 【事例】転倒しテーブルの脚に頭をぶつけ硬膜外血腫
- ソファにつかまりながら伝い歩きをしていたところ、つまずいて転倒し、左側頭部を金属パイプ製のテーブルの脚にぶつけた。左側頭部付近に柔らかい腫瘤(しゅりゅう)があったが受診しなかった。翌日の夜、痙攣(けいれん)があり、受診すると、硬膜外血腫があり入院。
- (2012年4月発生 11カ月、女児、中等症)
- 【事例】自転車の前座席に座っていて自転車ごと転倒し腕を骨折
- 自転車の前座席にのせてヘルメットを装着したが嫌がったため顎のベルトはしていなかった。後部座席に兄を乗せようと兄を連れに行ったところで自転車が左側へ転倒し、そばにあった鉄の柵で頭頂部を打撲し、1cmほどの腫脹(しゅちょう)と、左の両前腕骨骨折。
- (2013年4月発生 2歳6カ月、女児、中等症)
「誤飲・誤嚥」による事故
0・1歳はタバコ、2歳は医薬品が上位、ボタン電池はどの年代でも上位
- 【事例】たばこを食べて入院
- たばこを1本食べ、半分は出した。その後、嘔吐し嘔吐物にたばこのかすがあった。顔色不良、要入院。
- (2015年5月発生 8カ月、女児、中等症)
- 【事例】ボタン電池が食道にとどまり手術で摘出
- テレビのリモコンで遊んでいた。その後、リモコンのボタン電池がないことに気づいた。食道第一狭窄(きょうさく)部にボタン電池があり、3時間かけて摘出した。
- (2012年11月発生 1歳5カ月、男児、中等症)
- 【事例】祖父の薬を飲んで胃洗浄
- 祖父の脳梗塞、前立腺肥大、頭痛の薬3種類3錠を飲んでしまい、胃洗浄にて入院。
- (2015年3月発生 2歳9カ月、女児、中等症)
「さわる・接触する」による事故
「さわる・接触する」はやけどの事故がほとんどで、中等症以上になりやすい
- 【事例】テーブルの上の電気ポットを倒しやけど
- テーブル(高さ80cm位)に電気ポットがあり、児が手を伸ばして倒れ、左上半身に熱湯がかかってしまった。目撃者なし。左腕、左全胸部、腹部水疱(すいほう)破れあり、全身の8-9%の熱傷。
- (2011年5月発生 1歳1カ月、男児、中等症)
消費者へのアドバイス
子どもの事故には発達に応じた特徴があることを知っておきましょう
重症や命の危険につながる転落、誤飲による窒息、溺水、やけどには特に注意しましょう
事故の予防には想像力を働かせましょう
重大な事故を防ぐために、想像力を働かせて、以下のような対策をとっておきましょう。
- 大人用ベッドやソファからの転落だけでなく、ベッドと壁の間に挟まれることもあります。大人用ベッドやソファには寝かせたまま、放置しないようにしましょう。
- ベビーベッドの柵は常にあげておきましょう。
- 子の身長の1.5倍以上の高さに子どもを置かないようにしましょう。
- 階段には転落防止の柵を付けましょう。
- 床面から1m以下の高さの場所(子どもの手が届くところ)に、口にしそうなモノ、倒れそうなモノを置かない、子どもが触れないよう工夫しましょう。また、低い場所の扉や引き出しは簡単に開かないようにしましょう。
- ペット用品を子どもの生活空間に置かないようにしましょう。
- 子どもの入浴中は眼を離さないようにしましょう。
- 子どもが小さいうちは浴槽に残り湯をしないようにしましょう。
- 火や電気、熱い飲み物や食べ物など、やけどを負う危険性があるものには子どもを近づけないようにしましょう。
事故の対策はこまめに見直しましょう
事故が起きて受診を迷ったら、専門の窓口に相談しましょう
電話相談や受診のときは、事故が起きたときの状況(エピソード)を伝えましょう
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20160114_1.html