厚生労働省は14日、社会保障審議会障害者部会(座長=駒村康平・慶應義塾大教授)に報告書案を示し、大筋で了承された。障害者の高齢化・重度化に対応することが柱。介護保険優先原則は維持した上で、新たなサービスを設ける。利用者負担の拡大は引き続き検討することとした。これを踏まえ、次期通常国会に障害者総合支援法改正法案を提出するほか、18年度の障害報酬改定に反映する。
報告書は近い将来に向けた課題を整理した観が強く、すぐにメスを入れるという印象は薄い。委員の意見が対立する場面もほとんど見られなかった。
障害者の高齢化・重度化に対応することが最大の論点で、65歳以上になると介護保険サービスの利用を優先する原則は維持する。介護保険利用に伴う利用者負担増に困惑する立場からは異論が多い。
厚労省は機械的に「優先」することのないよう自治体に通知しているが、委員からはさらなる運用改善を求める声が上がった。
新サービスとしては、一人暮らしの知的障害者、精神障害者を定期的に巡回したり随時対応したりするものを設ける。軽度者がグループホーム(GH)から一人暮らしに移れるよう、日常的な健康管理などを支える。
GHに空きをつくり重度者の受け皿としていく絵を厚労省は描くが、委員からは、軽度者が意に反して追い出されることを懸念する声が上がった。就労後の定着支援についても新サービスを設けることとしたが、具体的な内容が不明瞭だとする意見が上がった。
重度者支援を厚くする観点では、入院中の移動支援、重度訪問介護の利用を進める。意思能力の低下した人が増えることも想定し、障害福祉サービスに意思決定支援の要素を含むことを明確にする。
また、障害福祉サービス利用者が65歳になっても同じ事業所の提供する介護保険サービスを利用できるよう、介護保険事業所の指定を受けやすくする。
親亡き後を見据えて支援体制を整える主任相談支援専門員(仮称)も創設する。
サービス利用に伴う利用者負担の拡大は、条件付きで容認する委員が多かったが、利用者の生活実態の把握に一定の時間がかかることなどから、報告書は「引き続き検討する」とした。
現在、総合支援法に基づくサービスの利用者のうち9割は無料で利用。財務省はサービスの総費用がこの10年で2倍に増えたことを重くみて、持続可能な制度にするよう求めていた。
報告書案を読む限り、負担する人がすぐに広がるとは考えにくいが、負担増は政治案件のため、法案作成や報酬改定議論の過程で急浮上する可能性は否定できない。
13年4月施行の総合支援法は施行3年後に見直すことを付則に規定。厚労省は今年4月から同部会で議論を重ねてきた。
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