医療機関ネットワーク事業において、以下の事故情報が寄せられました。
「2015年6月、嘔吐(おうと)が始まり翌日に近所の病院を受診したが症状が改善されないため、当該医療機関を紹介され受診した。開腹手術した結果、誤飲した異物による十二指腸閉塞(へいそく)であることがわかり、直径約4cmのボール状の異物を摘出した。患児の保護者から提供された事故同型品を確認したところ、異物は、吸水することで膨潤するディスプレー用製品であり、吸水前は直径1~1.5cm程度、吸水するとゼリー状に膨らむものであった。」
(2歳・女児・重症)
写真1 手術で摘出された異物(左)、同型品(右下)
写真2 同型品
写真1(左)は当該医療機関から提供された摘出物、写真2(写真1(右下))は患児の保護者から提供された同型品です。この摘出物は、当該医療機関から提供された写真等から見て、高吸水性樹脂製品と考えられました。
高吸水性樹脂は、水と接触することによって吸水し、自重の100~1,000倍の水を吸収でき、吸水することでゲル状になる性質があり、一度吸水すると圧力をかけても水が戻りにくい特徴があります。
高吸水性樹脂を利用した一般消費者向け商品は、高吸水性樹脂、吸水性樹脂、アクリルポリマー、吸水性ポリマーなどと表示され、吸水・保水させるタイプとして、紙おむつや生理用品などの衛生用品、着色した観賞用のインテリア用品などがあります。また、吸水・ゲル化した状態で販売されているタイプとして、有効成分を添加した芳香剤・消臭剤や虫よけ用品、栄養成分を添加した園芸用品などが見られます。
他の事故事例
- 高吸水性樹脂製の虫よけ用品のゼリー状の粒1粒を食べた。目撃していないが、自分から言ってきた。口の中から商品のにおいがした。
- 娘がおもちゃのビーズを耳に入れてしまった。ビーズが水を含んで耳の中で膨張し、緊急手術をして取りだした。
主な調査結果
- 同型品及び市販品4銘柄の材質をフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)により調べた結果、いずれもポリアクリル酸ナトリウムと考えられました。
- 市販品4銘柄のパッケージや取扱説明書には、“食べ物ではない”“口にしない”旨の表示がありましたが、万が一誤飲した場合に消化管がつまることがある旨の記載は1銘柄のみで、他の3銘柄には具体的な危険性の記載はありませんでした。また、当該1銘柄には、医師に相談する際には当該説明書を持参する旨の記載もありました。
- 同型品および参考品を体内の胃液や腸液を想定した模擬液に浸(つ)けて膨らむ様子を見たところ、いずれも胃液を想定した模擬液では大きな変化は見られず、腸液を想定した模擬液では、徐々に膨らむ傾向が見られました。
消費者へのアドバイス
- 高吸水性樹脂製品は、乳幼児の手の届かない、見えない所に保管し、誤飲を防ぎましょう。
- 誤飲に気づいたとき、疑いがあるときは直ちに医療機関を受診してください。
事業者への要望
高吸水性樹脂を誤飲した場合の危険性について、商品パッケージや取扱説明書等に記載することを要望します。
情報提供先
- 消費者庁 消費者安全課
- 内閣府 消費者委員会事務局
- 経済産業省 製造産業局 化学課
- 経済産業省 商務情報政策局 製品安全課
- 経済産業省 商務情報政策局 日用品室
本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20151001_1.html