薬をビールで飲んだらダメなの? 薬は水でという常識が正しいのかを調べる実験に摂南大薬学部(大阪府枚方市)の学生が取り組んでいる。こうしたテーマの科学論文を探しても答えが見つからなかったため自分たちで調べることにした。
きっかけは同学部6年、山田翔太さん(25)の疑問だった。ある年の正月、伯父が風邪薬をビールで飲んでいた。「お酒で飲まん方がいいんちゃう」と言ったが、根拠が説明できなかった。
昨年2月ごろ、卒業研究のテーマを決める際に医薬品の適正使用について研究する医療薬学研究室を選び、この時の疑問を思い出した。「先生、薬をビールで飲んだらなぜダメなんですか」。指導教官の小森浩二講師も十分な根拠が示せない。ある種の薬とグレープフルーツの組み合わせは悪影響があるが、アルコールで実験した論文は見つからなかった。「おもしろい。調べてみよう」と同級生の福田昌孝さん(24)と実験を始めた。
薬は、風邪薬で多く使われるイブプロフェンを選んだ。マウスに飲ませて血中濃度を測ると、ビールと日本酒はほぼ同じ値を示し、濃度がピークとなる30分後で水の3分の2程度に抑えられていた。
マウス実験を担当した福田さんが日本薬学会などでポスター発表すると多くの研究者が関心を示した。「皆が知りたがることを研究する楽しさを感じている。血中濃度が下がるメカニズムを突き詰めたい」と意気込む。
薬をさまざまな飲料で溶かす実験を担当する山田さんは、コーヒーや牛乳、茶などでも試し、データを積み重ねている。「飲み物を見ると『これは溶けやすいかな』と考えてしまう」
薬剤師を目指す2人は「『薬は水で飲んでください』と自信を持って言えます」と声をそろえた。【根本毅】
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