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「日本の子育て環境は異様だ!」若き社会学者が「保育園・義務教育化」を提唱

日本の子育ての環境は厳しい。高額な出産・育児費用、一向に解決しない保育園の待機児童、子育てに厳しい労働環境-。こうした状況を解決するアイデアとして社会学者の古市憲寿さん(30)が7月、「保育園義務教育化」(小学館)を出版した。文字通り、0歳~小学校就学前の保育園、幼稚園を無料として義務教育とする発想で、「重要な未来への投資になる」と語る。今注目を集める若き論客に込めた思いを聞いた。(三宅陽子)

--出版のきっかけは。

周囲に子育てをしている人が増えて待機児童問題などを耳にするにつけ、日本の子育てを取り巻く環境は「異様だ」と感じるようになった。

結婚もしていない、子供もいない部外者にみえる人間だからこそ、一歩引いて書く意味があると思った。

--保育園の義務教育化とは、インパクトがある。

義務教育といっても、毎日子供を預けろということではなく、週1回であってもいい。どれくらい預けるか(の頻度)は、柔軟でいい。子供と社会の接点を早い段階からつけてあげる場所として、保育園、幼稚園を無償に近い形にし、誰でも入れるようにするというものだ。

ただ、子供を預けることに罪悪感を感じてしまう人は多い。「義務教育」と呼ぶことで、子供を預けることに後ろめたさを感じる人の抵抗感が軽減できるのではないかとも考えた。

子供にとっても、保育園なり幼稚園なりに預けられることは実は大事なことだと思う。

■義務教育の低年齢化は世界の流れ

--義務教育化の意義は。

教育への投資は早ければ早いほどいい、というのは教育経済学の定説だ。

ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授は、6歳までにほぼ人間の「非認知能力」(物事に対する意欲や忍耐力、自制心、想像力といった生きていくために必要な力)は決まってしまうと言っている。

良質な乳幼児教育を受けた子供は、大人になってから収入が高く、犯罪率が低くなることも分かっている。

6歳までにいかに子供に社会性やコミュニケーション能力を持たせるかは非常に重要といえ、現に世界では義務教育の年齢を引き下げる動きが始まっている。

例えば、フランスではすでに3歳から保育園は無料だし、その義務教育化も検討されている。イギリスや韓国では、義務教育の年齢を5歳にまでに引き下げており、ハンガリーでは昨年から3歳~16歳までが義務教育となった。

日本はあまりにも乳幼児教育に国が責任を持たない、お金をかけていない不思議な国という印象だ。

--日本では3歳までは子供は母親が育てるべきという“3歳児神話”が根強く残る。

昔は親(しん)戚(せき)や地域の人などたくさんの人の中で子供は育てられた。だが、今は(核家族化などで)母親たちは育児不安を一人で抱え、孤立しがちだ。

子供たちに早くから社会性をもたせるという意味では、こうした状況下に子供を置くことは、ある意味、リスクだと感じる。

また、今は日本の子供の貧困が問題になっている。これまでの日本は中流の家庭が多かったが、これからは、(非認知能力を獲得するにあたって)子供にお金をかけられる家とそうはいかない貧しい家とで、差がどんどん開いていく恐れがある。

貧困の連鎖を食い止めるためにも、乳幼児教育に国が責任を持つというのは非常に重要なことだと感じる。

--義務教育とする場合、財源をどう確保するかという問題も出てくる。

税金を増やすことでできることはあると思う。

世論調査を見ると、「自分の生活に実感のある形であれば、税金を増やしてもいい」という人は多い。(そういう傾向から考えれば)例えば、これから消費税を10%にすると言っているが、それを11%にして、増やす1%は全部少子化対策に充てたいとの説得の仕方であれば、(増税に)大批判は起こらないのではないか。

■少子化は社会制度そのものに問題

--保育園の義務教育化は少子化対策にもつながるか。

少子化の問題は「最近の若者は恋愛しないからだめなんだ」といった若者の気持ちの問題にされやすい。だが、実際は意思の問題ではなく、社会制度そのものに問題がある。

データを見ると、安定収入と安定雇用があると、女性は子供を産む。それがないと女性は子供を産まない(傾向がある)との結果が明確に出ている。だが、昭和の時代のように、年齢とともに収入が上がっていくモデルに戻れるかといったらそれは難しい。

だからこそ、「お金がなくても子供が産めるかな」と思うぐらいの仕組みを作る必要がある。

例えば、少なくとも第1子に関しては、貯金がまったくなくても大学まではいけるといった安心感があれば子供は産みやすくなる。

フランスでは、第1子から支援をしているし、保育園は3歳からほぼ全員入れる。子供の数が増えて引っ越したら、引っ越し代も出してくれるなど、(少子化対策として)考えられることをすべてやっているという印象だ。

日本も(人口減少という)危機的な状況にあるのだから、同じようなことをすぐにでもやればいい。

乳幼児教育を含め、こうした仕組みづくりにこそ、国はお金をかけるべきだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150831-00000537-san-life

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