伸び悩む男性の育休取得
2014年度雇用均等基本調査(速報)が厚生労働省から公表され、男性の育児休業取得率の割合が2.30%となったことが明らかとなった。
前回調査(同2.03%)より0.27 ポイント上昇したものの、政府が掲げる「2020年13%」という目標からも程遠く、男性の子育て環境は依然として厳しい状況となっている。
国は、ここ10年で育児・介護休業法や雇用保険法を改正し、男性が育児休業を取得しやすい環境づくりを目指してきたわけだが、現実のこの取得率は、取得する男性側の意識が追いついていっていないことの現れとも言える。
育休を取得する上での誤解
ここ何年かの男性の育児休業取得率は2%前後に留まっている。では、「取得したいと思っている男性」というのはどれくらいいるのか?
一般社団法人日本能率協会が公表している2012年度新入社員「会社や社会に対する意識調査」結果によると、育休を希望する男性は33.9%に上っている。
つまり、希望したとしても、10人に1人も確実に取れていない状況ということだ。
これには、まだまだ育休を取得する上での誤解があることも取得を妨げる要因だ。
その最大の誤解として、いまだに「所得がゼロになる」という間違った認識を持っている男性も多いということだろう。雇用保険に加入している労働者であれば、雇用保険から「育児休業給付金」を受け取ることができ、育休取得後6ヵ月については、取得前の給与の3分の2が保障される。社会保険料も免除になっているため、実質的には約8割の給与が保障されている。これは、育休先進国と言われる北欧諸国並みの高水準だ。
昨年4月にこの制度が導入されたことから、その実質的な効果は来年度の育児休業取得率に反映されることになるであろうが、さらなる労働者への周知が求められるところだ。
来年度も同程度の取得率しかないようだったら、女性の産後休暇のように男性にも強制的に取得させるようなことも検討すべきであろう。
「男性が育休を取らない」というリスク
最近では、立ち会い出産や出産直後に育休に限らず、年休や特別休暇を取得するケースも増えたが、数日や1週間などのごく短時間の一時的なものだと、男性の子育て意識への波及も中途半端なものに終わることになってしまう。
出産直後、母親はホルモンバランスなどの問題もあり、心身ともに辛い状況に置かれる。様々なプレッシャーを母親だけで乗り越えさせるのでなく、父親と一緒に乗り越えるという経験が大事だ。さらに、2番目、3番目、さらにそれ以降の子どもの育休取得であれば、幼い上の子の面倒を父親が担ってくれることになり、生まれたばかりの赤ちゃんに集中したい母親にとって負担を軽くすることにもつながる。
最低でも1ヵ月、2ヵ月の育休を男性は取ったほうがいい。当然、生活をする上では、育児だけでなく、家事もこなすことになる。完璧に家事をこなしながら、イレギュラーな子育てをするということがいかに大変なことか、男性自身が思い知る機会にもなる。その機会が得られないで、その後の子育てをすることになれば、育児や家事への意識の格差、技術の格差は広がる一方になるだろう(もちろんこれは一般的な話であり、当然そうでない家庭もある)。
ごく短期間の一時的な経験ではなく、1~2ヵ月は最低限「夫婦ともに子育てができる」という雰囲気を家庭の中で醸成させることが必要なのではないだろうか。
職場に1~2ヵ月いなくなるというのは男性にとってもプレッシャーになるかもしれないが、自分の人生にとって、そして家族にとって、このたった1~2ヵ月を大切にする社会を作り出すことが重要で、それも難しいようでは、少子化問題も一向に解決できまい。
たぶんこれも知られていないことだが、毎年6月23日~29日は「男女共同参画週間」となっている。子育てはまさに男女の共同作業だ。
男性が子育てをする絶好の機会を奪うことで、「子育ては母親」という価値観が男性の中で否が応でも刷り込まれていってしまうことになる。その中で、懸命に闘っている男性も増えてはきているが、勝ち目のない試合と判断し、断念してしまう男性も多い。
地域のコミュニティ機能が弱まり、核家族が進行する中で、「子育ては母親がするもの」という呪縛からいち早く解き放たれなくてはならない。
誰かがほかの人が取って男性の育児休業取得率が上がるものではない。これから生まれようとしている新たな命に男性1人ひとりが育休という形で一歩踏み出すことがいまこそ必要なのだと思う。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yoshidahiroki/20150626-00046990/