■国民的歌手の栄光と苦労
昭和を代表する国民的歌手、三波春夫(本名、北詰文司、1923~2001年)の顕彰碑が出生地の近く、長岡市(旧塚山村)塚野山にある。
三波は実家の書店が傾き13歳で上京した。米穀店や製麺所で働くうちに好きな浪曲で身を立てようと、16歳で日本浪曲学校に入学。やがて、南條文若の名で全国を巡業して回った。昭和19年に出征し、4年間のシベリア抑留を経験。帰国後は浪曲師として復帰するも、歌の世界へ転身を図った。32年、「チャンチキおけさ」でデビュー、「東京五輪音頭」「世界の国からこんにちは」などのヒットを飛ばした。あの笑顔と明るい歌声の陰にこんな苦労があったのかと初めて知り、驚いた。三波春夫の芸名は、歌と芸と人生の3つの波を乗り越える若い男(春夫)という意味があるそうだ。
銅像は有名なセリフ、「お客さまは神様です」のポーズをとっている。三波の著書『歌藝の天地』(PHP研究所)を参考にすると、「お金を払い楽しみを求めて入場するお客さまに代償を持ち帰ってもらう。お客さまは絶対者の集まりなのだ。天と地との間に絶対者と呼べるものは『神』であると私は教えられた」ということだそうだ。
「チャンチキおけさ」の歌碑もあり、ボタンを押すと、三波のヒット曲5曲が流れるようになっている。
隣接する「塚山活性化センター」に三波に関する資料コーナーがあり、レコード約180枚、出演映画ポスター、帰郷時の写真などが飾られている。町制記念歌謡ショーに出たり、母校に寄付したりするなど常に故郷を思っていたようだ。
田んぼに囲まれて「チャンチキおけさ」を聴く。このヒットの後に生まれた記者も、望郷の念という意味が分かった気がした。(慶田久幸)
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■三波春夫顕彰碑
新潟県長岡市塚野山5141。塚山活性化センターは開館時間午前9時~午後4時半、年末年始休館。JR信越線塚山駅徒歩15分、関越道小千谷インターチェンジ車20分。問い合わせは(電)0258・94・2015。
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