■政府の早い対応のわけは
ホワイトハウスの敷地内に落下するなど、テロに使用される危険性が指摘されていた小型無人機「ドローン」。
日本でも、首相官邸の屋上に落下しているのが発見されたり、長野市の善光寺で、行事の最中に上空から落下するなど、国内でも事故の不安が指摘されたのを受け、日本政府はドローン対策新法を今国会中に「議員立法」で成立させる方針を決めた。
これまで、玩具として使用されてきたラジコンヘリなどと違い、ドローンについては異例の早さで法制化が進められる。その理由はどこにあるのか。
■悪意による使用を警戒
考えられる一つめの理由は、従来のラジコンヘリなどが単体として飛ばしたり、装備したカメラで撮影するくらいの機能しか持っていなかったのに比べ、ドローンは物体を運搬する機能を持ち、GPSにより、行き先をピンポイントで指定できる点にあると考えられる。
つまり、悪意を持って使用された際の影響が大きい点だ。
■「名前」自体が警戒心を刺激した可能性
そして二つめの理由は、意外に思われるかもしれないが、ドローンという「名前」そのものにある可能性がある。
ドローンとは、もともと英語で「雄のミツバチ」や、ハチが飛ぶ時に発する羽のブーンという音を意味する言葉だが、それがやがて無線操縦による無人飛行物体の通称として使用されるようになった。
事情通によれば、今話題になっている民生用(一般向け製品)としての通称ドローンが誕生する前は、ミサイルなどもドローンと呼ばれた時代があったという。
■ドローン=軍事目的の装置というイメージ
さらに、現在も軍事目的で米軍等が飛ばしている無人偵察機もドローンとして呼ばれることがあるといい、実際に『プログレッシブ英和中辞典』にもドローンは「(無線操縦による)無人飛行物体(ミサイルなど)」と明記されている。
つまりドローンという名前自体がそもそも軍事目的の装置をイメージさせ、軍事関係者や政府関係者の警戒心を刺激した可能性も考えられる。
■議員立法による法制化の意味
そんなドローンによる問題を防ぐため、飛行禁止エリアの設定などを含む新法が制定されることになったが、その手続きは「議員立法」により、今国会中に行われる予定だ。
「議員立法」とは議員によって法律案が発議されるものを指し、内閣が法案を提出する「内閣立法」とは異なるプロセスを踏むもの。
日本では従来、内閣が法律案を作成して国会に提出する「内閣立法」が中心であったが、変化の激しい社会情勢に合わせて適切な法律を作る必要性から、問題意識を持つ議員ら自身が直接法制化に関わる「議員立法」は重要性が増している。
例として、平成12年に成立した「ストーカー行為等の規制等に関する法律」などがあるが、直近で言えば、与野党問わず超党派によって提出された通称”カジノ法案”が代表的。
今回のドローン対策も議員立法によって行われるということは、国会議員がその重要性を認識していることの現れと言える。
文・松井 政就(All About 社会ニュース)
松井 政就
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150514-00000013-nallabout-life