泉田裕彦知事と県民が対話するタウンミーティングが「原子力発電所の安全確保」をテーマに刈羽村生涯学習センターで開かれた。東京電力福島第1原発事故の発生から4年2カ月。専門家との討論で、柏崎刈羽原発の過酷事故対策が焦点となり、SPEEDI(放射能物質拡散予想システム)活用や安定ヨウ素剤配布の要望、国の防災行政の不備などを指摘する意見が相次いだ。一方で、会場から泉田知事に、再稼働に対するスタンスを問う質問も出た。
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タウンミーティングには、原発安全管理に関する県技術委員会委員で原子力コンサルタントの佐藤暁氏と、東大大学院総合防災情報研究センター特任准教授の関谷直也氏、「柏崎刈羽原発の透明性を確保する地域の会」前会長の新野良子氏が出席して泉田知事と討論。地元住民ら約290人が聞き入った。
元ゼネラル・エレクトリック(GE)原発技術者の佐藤氏は、欧米に比べ日本の事故対応の遅れを問題視。「フランスは福島事故後、原発から総員撤退する重大事故を想定して特別救助チーム『FARN』を作ったり、発電所運転員に想定外のシナリオを投げかける防災訓練を行ったりしている。日本のように同じパターンの訓練を反復するだけでは不意打ちの事故対応が難しい」と指摘した。
新野氏も「緊急時の特殊部隊を前向きに考えるべきだ」と指摘するなど、ソフト面の強化に共感した。
関谷氏は、原発からの放射性物質の拡散状況を予測する「SPEEDI」を活用せず、原発から5キロ圏内の自治体に安定ヨウ素剤の事前配布を求めた原子力規制委員会の原子力災害対策指針に触れ、「防災の範囲に聖域を設けないで住民の被曝(ひばく)を最小に防ぐべきだ」と主張した。また、避難指示情報を避難先の住民に適切に伝える方策まで含めて実効性のある避難計画を整備する必要性を説いた。
泉田知事は「高線量下の作業現場に誰が行くかの議論がタブーになっている」と指摘。地方公務員の被曝量上限値が年間1ミリシーベルトになっているが「それを緩める議論がない」と応じた。
会場からも放射線防護の態勢強化を求める声が出た。刈羽村の女性は「村役場にヨウ素剤が置いてあるというが、いざとなったら配布されるか不安。早く5キロ圏内の住民に事前配布してほしい」、長岡市の男性は「5キロ圏外の屋内退避の態勢づくりを考えてほしい」などの発言があった。一方で、「知事は原発再稼働に前向きだと思いたい」との質問も出た。これに対し泉田知事は「議論の前提となるのが安全確保だ。そこから先は予断を持つべきではないと思う」と答えるにとどまった。
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