徘徊(はいかい)で行方不明となる認知症患者を減らそうと、酒田市などが今月、小型の電波発信端末(BLE)を活用した見守りシステム構築に向け実証実験を始める。携行する端末の電波を複数設置した受信機がとらえ、家族らに自動的に時間と場所をメールで通知する。市によると、BLEを使った実証実験は全国で初めて。
市八幡総合支所から半径約1.5キロのエリアの幹線道路沿いに、11の受信機を設置する。地区内の家族10組がモニターを務め、6月末まで発信端末を携行する。
端末は500円玉大。身に付けた人が受信機近くを通ると、公衆無線LAN基地局「光ステーション」やサーバー経由で、事前に登録した家族のメールアドレスに情報が届く。「自宅から1キロ以内の移動は通知しない」といった個別の設定もできる。
見守りシステムは、山形市の第三セクター「キャプテン山形」が鶴岡市の鶴岡工業高専と開発した。
これまで衛星利用測位システム(GPS)など情報通信技術を用いた見守りシステムはあったが、価格や電池寿命などが普及の障害となっている。BLEの場合、発信端末は2000円ほど、電池も1~2年利用できる。
事業費はキャプテン社などが負担し、市や市社会福祉協議会が住民との調整役を担う。
厚生労働省の推計によると、2025年には認知症の高齢者が700万人前後に達するとみられ、徘徊の問題も深刻化が予想される。山形県内では13年、120件の行方不明事案があり、うち13人が死亡後に発見された。
酒田市の岩堀慎司健康福祉部長は「認知症の人がBLEを携行する頻度や通信面での課題などを明らかにし、事業化の可能性を探りたい」と話した。
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