日本老年医学会などは、副作用が大きいために高齢者への使用の中止を医師が考慮すべき薬を約50種類挙げた一覧を作成した。10年ぶりに改定予定の「高齢者の安全な薬物療法指針」の中に盛り込む。
同学会のホームページに指針案を掲載し、1日から広く意見を募ったうえで、正式決定する。
さまざまな病気を抱える高齢者は多くの薬剤を漫然と長期間処方されがちだが、特に体力が低下した高齢者には有害な副作用が出やすい薬剤もある。
同学会が2005年に策定した指針では、効果より副作用の害が大きい薬について「慎重投与」としていたが、今回の改定で「使用中止を考慮すべき」と記述し、医師などに強く注意を促した。新しい薬も検討のうえ、一覧に加えた。
一覧に挙げた副作用として、作用時間の長い睡眠薬は、認知機能の低下やふらつき、転倒を招く危険がある。抗精神病薬は認知症患者の徘徊はいかいや暴力を抑えるために投与すると、脳血管障害と死亡率を上昇させる。
指針案では、こうした薬剤それぞれについて、別の薬剤に変更したり、使用期間を短くしたりするなどの対処法を示している。ただし、患者が自己判断で服用を急にやめると、急激な悪化を招く危険もある。指針案をまとめた秋下雅弘・東大教授は「薬の減量、中止は、医師や薬剤師と相談して進めてほしい」と話している。
(2015年4月1日 読売新聞)
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