今日から新年度。小学校に入学する新1年生は、登下校時や放課後など、1人で行動する場面も多くなる。犯罪に巻き込まれないためには、子どもが自分で危険を察知し、行動できるようになることが大切だ。
東京都内で先月20日、「新1年生のための体験型防犯教室」が開かれた。開催したのは、NPO法人「体験型安全教育支援機構」。代表理事の清永奈穂さん(44)らは、犯罪者の行動や子どもの危機回避事例分析の調査研究などを基に、防犯対策を提唱している。
●安全マップを作る
新1年生の登下校時に必要なのは、まず「体の中に『安全マップ』を作ること」と清永さん。実際に通学路を子どもと一緒に歩いて危険な場所や何かあったら逃げ込める場所を体感し、確認しておくことだ。「ここにきれいな花が咲いているね」「ここは車がたくさん通るね」など、子どもと会話しながら歩いてみることが大切という。ポイントになる場所を写真に撮り実際に地図に貼り付けると、子どもが覚えやすい。
緊急時の避難先となる「こども110番」の店などがあれば、子どもと一緒に訪れ、「何かあったときはよろしくお願いします」とあいさつする。そうすれば、子どもも1人で駆け込みやすくなる。危険な場所の特徴は、清永さんらが作成した「ひ・ま・わ・り」(表1)が参考になる。登下校の際は、「寄り道しない」「必ず決めた道を通る」と、約束する。
登下校時以外にも、公園などには人目に付かない場所がある。特に公共トイレは、1人ではなく必ず友達と行くことが大切だ。大人と一緒の場合でも、スーパーや飲食店のトイレは死角にあることが多く狙われやすい。面倒でも、トイレの前まで大人がついていくほうが安心だ。
●距離感をつかむ
外を歩くときは、しっかり前を見て歩く練習をしよう。清永さんによると、犯罪者は、20メートル先から狙いを定め、9~10メートルの距離で決心し、5~6メートルの距離で行動に移すという。刃物を持っているなど明らかに様子がおかしい時はすぐ逃げること。最低でも6メートルの距離で気付き逃げられるよう、前からどんな人が来るのかをしっかり見て、普段の散歩などで距離感を覚えることが大切。「あそこにお花が咲いているよ」などと前方にあるものを指したり、「今すれ違った人、どんな服を着ていた?」と尋ねたりして、前をきちんと見て歩くように促すとよい。
防犯教室では「上手なすれ違い方」の練習もした。「自分のほうにぐんぐん近づいて来る人や、なんか変だなと思ったら、相手が一歩前に出て手を伸ばしても届かない距離を保ってすれ違うこと」。目安は新聞紙の片面3枚分(約1.3メートル)という。
とはいえ、「悪い人」を見極めるのは大人でも難しい。中には本当に道を尋ねたいだけの人や、あいさつをしてくれる人もいるかもしれない。清永さんらが注意を促すのは「は・ち・み・つ・じ・ま・ん」(表2)が特徴の人だ。さまざまな言葉で誘われても「行きません」ときっぱり断ったり、無視したりすること。もし、悪意のない人だと分かったら「間違ってごめんなさい」ときちんと謝ることを教えよう。
防犯ブザーは、首からかけていると危ないため、ランドセルの肩ひもなどに付けておくとよい。子どもがすぐ手を伸ばしやすいよう、引っ張るひもの先が腰の位置に来る高さが目安。買った後は、実際に鳴らして操作方法を覚えておく。
●逃げ方も練習
声をかけられたり腕をつかまれたりした時はどう対処するか。防犯教室で練習したのは、(1)体を「く」の字に曲げて、つかまれていない方の手を大きく振り、「助けて」と大きな声を出す(2)後ろから覆いかぶさってきたり抱きつかれたりしたときは、両肘を横に上げ、下にしゃがみ、低い姿勢から駆け出す「ロケットダッシュ」(イラスト)で逃げる(3)どうしても逃げられないときは、おしりを地面につけて足で相手のすねを思いっきり蹴って相手がひるんだすきに逃げる--の3種類。相手の手にかみつくのも効果的だ。公園など広い場所で練習をしておくと、とっさの時に役に立つかもしれない。
逃げるときは、最低20メートルを全力疾走する。清永さんは「子どもには、『ランドセルなんか放り出してもいいんだよ、靴は脱げてもいいんだよ、とにかくあなたの命が一番大事だから、あきらめないで』と繰り返し伝えてほしい」と話す。
1年生の時は難しくても、2年生、3年生と学年が上がるとできることも増えてくる。清永さんは「できないからといって焦らずに、子どもと一緒にゲーム感覚で練習し、体感することが大切」と話した。【塩田彩】
1 あやしいばしょの四つのとくちょう
・「ひ」とりだけになるところ
・「ま」わりからみえない(みえにくい)ところ
・「わ」かれみち・わきみち・うらみちのおおいところ
・「り」ようされていないいえやこうえん、だれもいないところ
2 あやしいひとの五つのとくちょう
・よくしらないひとなのになにかと「は」なしかけるひと
・りゆうもないのに「ち」かづいてくるひと
・あなたをみちのはしなどからじっと「み」つめてくるひと
・いつまでもどこまでも「つ」いてくるひと
・あなたがくるのを「じ」っと
「ま」っているひと
こういうひとがいたら「ん」!?と注意
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150401-00000018-mai-soci