千葉県がんセンター(千葉市中央区)で腹腔鏡ふくくうきょう手術後に相次いで患者11人が死亡した問題は30日、県が設置した第三者検証委員会が報告書を提出し、大きな節目を迎えた。
同センターの体質的な問題が浮き彫りになった一方、病院関係者は信頼回復に向けた決意を口にした。
がんセンターはこれまで、難度の高い手術にも取り組んでおり、日本外科学会も「先駆的な取り組みを行っていた」とした。ただ、こうした「挑戦的」とも評される手術に取り組む病院の体制について、「リスクを病院として共有するシステムが欠如し、腹腔鏡手術推進の雰囲気と専門分野への介入の困難さが、対応が遅れた原因」と厳しく指摘した。
報告書は提言で、「新しい高難度の手術については、適応の確認、保険適用の有無、さらには腹腔鏡で行わないとの決断も含め、部内で合議し、厳正に可否を決定する体制を早急に構築してほしい」と求めた。一方で、過去の死亡例での事故報告書を公表せず、家族にも説明していなかったことを「組織的に隠蔽が意識されているとも受け止められかねない」とした。
検証委の遺族への聞き取りでは、「リスクについて説明されていない」「手術が腹腔鏡だとは知らなかった」「開腹と腹腔鏡のどちらかを選ぶ雰囲気ではなかった」との不満もあった一方、「よい病院になってほしい」と改革を期待する声もあったという。検証委の多田羅浩三会長は30日の記者会見で「職員や医者同士、医者と患者との協力で、一緒に病気と闘っていくということを改めて認識してもらいたい。具体的な一歩を踏み出してほしい」と話した。
県庁で30日夜、記者会見した同センターの永田松夫病院長は「がん専門病院なので、新しいことに取り組んでいくことはもちろん考えなければならない」として、腹腔鏡手術の推進姿勢は維持することを示唆。現在、保険適用外の腹腔鏡手術は休止中で、永田氏は「倫理審査委や安全管理など手続きをとった上でやらなければならないというのが反省。再開するにしても、厳格な手続きでやらなければならない」との方針を示した。
同日午後は臨時の県議会健康福祉常任委員会が開かれ、矢島鉄也県病院局長は「真摯しんしに受け止め、深く反省している。県民に安全で安心できる医療を提供できるよう取り組んでいく」と述べた。
(2015年3月31日 読売新聞)
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