日中関係が冷え込む中、障害者支援にかかわる両国の市民の連帯が広がり始めている。立命館大客員教授(障害学)の長瀬修さん(56)=横浜市港南区=が、中国の障害者福祉に貢献したとして、中国知的障害者家族会連合会から感謝状を贈られた。長瀬さんは「中国の市民社会と連携してきた結果。日中の平和の一助になれば」と話す。
今月10日、中国・西安市で開かれた同連合会第2回全国大会。招待を受けていた長瀬さんだが、表彰は予告なしの特別なものだった。感謝状には「あなたが利他主義の精神で、知恵と経験と元気を教えて下さり、あなたからのご支持と、援助の交わり、共に歩む気持ちを頂いたことを、深く感謝申し上げます」と書かれていた。長瀬さんも「とても感動し誇りに思う。日中の協力をさらに進めたい」とのあいさつで応えた。
知的障害者と家族の国際ネットワーク「国際育成会連盟」のアジア太平洋地域代表を2004年から務め、中国の家族会の支援にも携わってきた。
12年、北京で開かれた国際会議で中国の市民が障害者運動に取り組み始めていることを知り、感銘を受けた。日中関係は沖縄県・尖閣諸島問題で冷え込んでいたが、「市民社会同士の連帯が必要」と考えた。その後10回にわたり中国に渡り、講演などを行った。
昨年2月には南京で開かれた中国知的発達障害者ネットワーク大会にも出席。違憲判決を勝ち取った成年被後見人の選挙権訴訟と法改正について報告したところ、「満場の拍手だった。日本での障害者の権利の前進を喜び、共感してくれた」と語る。
北京の知的発達障害者親の会の理事や障害者組織「ワンプラスワン」代表などを日本に招き、障害者施設の視察をしてもらうなど交流を重ねた。「日中ともに刺激になった」という。
この分野の日中交流はこれまで「政府系組織との付き合いが中心だった」といい、長瀬さんは「当事者と市民の仲間と出会えた。このつながりを太くしていきたい。障害分野の市民レベルの協力関係は平和に役立つことができる」と話している。
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