大手電話会社の関連会社と誤解し、プロバイダー料金が安くなると勧誘され契約したが、説明されたほど料金が安くならない。解約を申し出たら違約金がかかると言われた事例を紹介する。
相談内容
「自宅で利用している光回線のモデムに大手電話会社のロゴマークがあるか、ランプは点灯しているか」と電話があった。マークがあり、ランプも点灯していると答えると、「ありがとうございます」とお礼を言われ、私の月額料金を知っているような説明があったので、大手電話会社の関連会社だと思い話を聞いた。「当社と契約すると、月額7,000~8,000円かかっている通信料が約2,000円安くなる。詳細は担当事業者から折り返し電話で説明する」と言われた。この時点で、自宅の月額の通信費用や契約内容等何も分かっていなかったが、大手電話会社の関連会社なら私の契約内容や料金をすべて知ったうえで話しているのだと思い、了承した。すぐにプロバイダー業者を名乗る会社(以下、事業者)から電話があり、「プロバイダー利用料970円と、今までのメールアドレスを引き続き利用するための料金270円で、ひと月のプロバイダー料金が1,200円程度になる」と言われ、安くなるならよいと深く考えず契約を決めた。事業者の指示どおりにパソコンで申込画面を出し、事業者が早口で読み上げた確認項目に言われるままにチェックを入れ、送信ボタンを押した。「遠隔操作をして、プロバイダーを利用できるようにする」と言われ、遠隔操作を受けた。しかしその後、今まで利用していたプロバイダー料金は月額1,360円であり、事業者が言うほど大幅に安くならないことが分かった。加えて、これまで使用していたプロバイダーの解約には違約金がかかると分かったため、契約当日に事業者に解約を申し出たところ、「2年間は解約できない。どうしても解約するならば、1万5000円の違約金が発生する」と言われた。納得できない。
(40歳代 男性 給与生活者)
結果概要
相談を受け付けた国民生活センター(以下、当センター)では、相談者に勧誘時の詳細な経緯を書面にまとめてもらい、事業者へ送付してもらった。あわせて、相談者に詳細な聴き取りを行い、事業者に話を聞いた。
事業者は、当該契約は代理店による勧誘と説明したうえで「電話会社が提供するインターネット回線の割引サービスを申し込めば、相談者も約2,000円安くなる」と主張した。それに対して当センターから、事業者との契約で割引が実現するものではない点、勧誘時には大手電話会社の割引サービスを利用する旨の説明は一切なく、説明不足であった点を指摘した。事業者は「代理店には勧誘方法等の改善を指導するが、相談者には電話会社の割引サービスに加入し、本契約を継続してほしい。解約するなら違約金を請求する」と主張した。
そこで、割引サービスの詳細を確認するため、当センターから大手電話会社へ相談者の契約内容等を確認したところ、相談者は半年前から割引サービスに加入済みだったことが分かった。この割引サービスとは、加入から5年目までは年々基本料金が下がるが、6年目以降は割引が止まり、料金が一定になるものであった。相談者の場合は、今後最大500円しか安くならないことが分かった。
当センターは事業者が事実と異なる説明を行って勧誘したと判断し、相談者の意向を踏まえて契約の取消しを求めた。事業者は「相談者から割引サービスに加入済みとの説明は無かった。当社はうそは言っていない」と反論したが、電気通信事業法26条で勧誘時の契約内容の説明義務は事業者にあること、および相談者の契約状況から「約2,000円安くなる」ことは実現しないことを伝え、再度契約の取消しを求めた。すると事業者は「違約金は請求しないが、初期費用3,780円は請求する。当社のサービスを利用した責任は果たしてほしい」と主張した。しかし、相談者は契約当日に事業者に解約を申し出ており、インターネットをまったく利用していないと主張した。また、後日事業者から相談者へ送付された解約料請求書の日付が契約日と同日だったことから、事業者は消費者の解約意思を契約日当日に認識していたと考えられたため、初期費用についても取り下げを求めた。後日事業者から、初期費用を含めた一切の費用を請求しないと回答があり、相談を終了した。
問題点
本件は最初の代理店からの電話であたかも消費者に大手電話会社と関連がある事業者と思わせ、契約にかかわる話を進めていた。また、事業者が勧誘時に約2,000円安くなると言った割引サービスは、事業者独自の割引サービスではなく、大手電話会社のインターネット回線の割引サービスであり、自身で申込みが必要なうえ、割引上限があった。相談者は当該サービスに加入済みであったため、事業者が勧誘時に説明した金額ほど月額料金は安くならなかった。一方、消費者側も自分の通信費用等の契約内容を覚えておらず、深く考えずに契約してしまった。またプロバイダーを変更した場合、変更前に契約していたプロバイダーについては消費者自らが解約手続きをしないと、料金が二重に発生してしまう。さらに、プロバイダー解約時には違約金の支払いが必要な場合もあるため、以前のプロバイダーの違約金も含めた全体的な費用を考慮することが重要である。
電話勧誘は不意打ち性があり、その場で書面等が示されないため、契約の相手方を確認することが難しく、事業者のペースに乗せられてしまうことも少なくない。そのため契約の前には、契約先、料金、サービス内容等の確認が必要であり、契約内容を理解しないままに電話口では承諾しないこと、契約の必要がなければ、きっぱりと断ることが重要である。さらに、プロバイダー等の電気通信サービスにかかわる契約は特定商取引法の適用がなく、法律上のクーリング・オフ制度はないので、いっそう注意が必要である。
参考:相談激増!遠隔操作によるプロバイダ変更勧誘トラブルにご注意(2014年9月18日 国民生活センター公表)
ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。
http://www.kokusen.go.jp/jirei/data/201503_1.html