2012~2014年度の間に当センターでは、ガラス繊維強化プラスチックを使った傘とテントについて、3件のテスト依頼を受けて実施しました。いずれも、商品の一部に使用されていたガラス繊維強化プラスチックの表面からガラス繊維が飛び出し、それを触って、けがをしたというものでした。
PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、2009年4月以降の5年間余りにガラス繊維強化プラスチックを用いた商品に関する危害・危険情報(注1)が32件(注2)寄せられており、「約1年前に購入した夫の傘の骨が折れた。傘の状態を調べている内に指がチクチクしてきた。」といったものがありました。
ガラス繊維強化プラスチックは、傘の骨やテントの支柱など、軽量で弾性が求められる部位に用いられていることがありますが、使われているガラス繊維は細くて肉眼では非常に見えにくいため、破損した部分等に触れ、けがにつながる場合もあります。
そこで、ガラス繊維強化プラスチックが使用されている商品について調査し、消費者に情報提供及び注意喚起することとしました。
- (注1)危害情報とは、商品・役務・設備に関連して、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けたという情報のことです。危険情報とは、危害を受けたわけではないが、そのおそれがある情報のことです。
- (注2)2015年2月15日までの登録分。件数は本公表のため特別に事例を精査したものです。なお、本資料中の事例の分析についても、本公表のために特別に精査したものです。
消費生活センターからの依頼テスト事例
ガラス繊維強化プラスチックが使われていた傘の骨やテントの支柱からガラス繊維が飛び出していました。
図.折りたたみ傘に使われていたガラス繊維強化プラスチック
主な調査及びテスト結果
使用されているものが多くみられた傘50銘柄について、使用箇所や表面の状態、表示等を調べました。
使用されている箇所
- 軽量で弾性が求められる傘の骨にガラス繊維強化プラスチックが使用されていました
傘骨の断面の観察
- 傘に使われていたガラス繊維強化プラスチックには、樹脂表面付近にまでガラス繊維が出ているものがありました
傘骨の表面の観察
- 新品時でも傘骨の表面にひびや傷があるものがありました
- 曲げたり傷つけたりすると、ガラス繊維の先端が樹脂表面から飛び出してくることがありました
表示
- 表示からガラス繊維強化プラスチックが使用されていることが分からなかったり、折らない、触れない等の注意表示がない商品もありました
消費者へのアドバイス
- 新品時から、あるいは折り曲げたりしたガラス繊維強化プラスチックは、表面からガラス繊維の先端が露出していることがあります。素手で触らないなど取扱いには注意しましょう
- ガラス繊維が皮膚に刺さって痛みが続く場合は、医師の診察・処置を受けましょう
業界・事業者への要望
- 商品に使用されているガラス繊維強化プラスチックからガラス繊維が飛び出してこないような改善、もしくは別の部材に置き換える等の改善を要望します
- ガラス繊維強化プラスチックが使われる商品には、材質と注意表示を徹底するよう要望します
行政への要望
- ガラス繊維強化プラスチックが使われている洋傘について、材質の表示と注意表示を義務化するよう検討を要望します
- 玩具や家庭用品に使われるガラス繊維強化プラスチックについては、使用の制限や部材の改善、材質表示と注意表示の推進を業界に指導するよう要望します
要望先
- 消費者庁 表示対策課
- 経済産業省 商務情報政策局 日用品室
- 日本洋傘振興協議会
情報提供先
- 消費者庁 消費者安全課
- 内閣府 消費者委員会事務局
- 経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ 製品安全課
- 一般社団法人強化プラスチック協会
- 硝子繊維協会
- 一般社団法人日本玩具協会
- 日本チェーンストア協会
- 一般社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会
本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20150319_2.html