離乳食はもちろんのこと、幼児食になってからも、子供に与える食事は「薄味が基本」と言われます。「これはなぜですか?」という質問を受けることがあります。主に2つの理由があり、ひとつは子供の身体への負担を減らすため、もうひとつは味覚の発達を促すためです。ここでは、乳幼児の食事の味つけについて、もう少し詳しく説明しましょう。
◆濃い味は子供の身体に負担をかける
乳幼児期の子供は腎臓の機能が未熟なため、塩分が多い食事は、腎臓に負担がかかります。また、濃い味の食事は糖分も多く含むことがあるため、カロリーが高くなりがちです。小さい頃からそのような食事が習慣化すると、将来、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病になる恐れがあります。最近では、子供のうちから発症する生活習慣病が問題になっているほか、成人でも塩分や糖分を控えることが推奨されています。家族みんなで薄味を習慣化できるとなおいいですね。
◆味覚の発達を促そう
赤ちゃんの味覚は、お母さんのお腹の中にいる時から発達し始め、新生児でもすでに甘味、酸味、塩味、苦味、うま味という5つの「基本味」を感じると言われています。味覚は、舌や軟口蓋にある味蕾(みらい)という感覚器官で感じるのですが、実は乳幼児の味蕾の数は大人よりも多いのです。このため、乳幼児のほうが大人より味に対して敏感という説もあります。乳幼児には本能的に好きな味と嫌いな味があり、「甘味」や「旨味」を好み、「苦味」を嫌います。また、経験によって養われていく面もあるため、乳幼児期にさまざまな味に出会うことはとても大切です。薄味を進める理由もここにあります。濃い味つけだと食材そのものの味をしっかりと感じ取れず、繊細な味覚が育たないのです。さまざまな味の情報を蓄積し、豊かな味覚を形成するために、薄味を心がけましょう。
◆薄味でもおいしい食事にするために
幼児食の味つけの目安としては、大人の半分程度と考えるとわかりやすいでしょう。薄味でもおいしく食べられるようにするために、素材の味を引き出す工夫が必要です。鰹節や昆布、しいたけなどの出汁を利用するのもひとつの方法です。また、炭水化物はよく噛むことで、甘味料とは異なる自然な甘みが引き出されます。これを利用しない手はありません。よく噛んで食べるくせをつけましょう。また、「おいしい」と感じる要素は味だけではありません。食事の香りや見た目、温度、固さなどさまざまなことが影響しているので、そうしたバリエーションをもたせることも大事です。同様に、食事の雰囲気も大切。家族ががニコニコ楽しそうに食事をしているだけで、おいしさの感じ方はまったく違ってます。食事の時間を楽しい、好き、と感じるようになるだけで、食欲も変化してくるものです。「薄味でもおいしい」食事になるように、さまざまな工夫をしてみましょう。
●鈴木ちひろ(すずき・ちひろ)
助産師・保健師・看護師。株式会社とらうべにて、妊婦・産婦の指導や相談に当たっている
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150318-00000004-mocosuku-hlth