妊娠から出産、育児まで、母と子の健康の記録が一冊に詰まった母子健康手帳。戦後間もない日本が世界に先駆けて始めた。母子手帳の海外への普及活動を20年以上続けてきた。
元々は脳性まひなどの神経病を専門とする小児科医。国際協力機構(JICA)の事業で1986年から約2年間、インドネシアの山村に赴任した時に、障害児を持つ母親の相談を受けた。ところが、妊娠中や産後の記録がなく、母親の記憶も曖昧で、「子どもの健康を守る手帳のありがたみに初めて気づいた」という。
帰国後、母子保健に魅力を感じ、東京大病院の臨床医としてキャリアを重ねながら、毎年途上国を訪問。現地の医療者らに、乳幼児の死亡率を下げるための指導や助言を続けてきた。
93年に旧知のインドネシア人医師と再会、「日本の素晴らしい母子手帳を母国にも」と訴える熱意にうたれた。手帳の原案作りなどに協力し、導入にこぎ着けた。手帳の普及を目指す国際会議を8回開催。手帳を導入した国は30か国を超えた。
「貧しかった時代に、知恵と工夫で作り上げた日本の財産を、世界に広げていきたい」(医療部 野村昌玄)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150316-00010000-yomidr-soci