人間の肌はpH値が4.5~6.0の弱酸性です。これによって肌の抗菌性が保たれています。このことから、弱酸性の石鹸などが「お肌にいい」とする説が定着しています。しかし、実はこうした主張は「弱酸性神話」とも言われており、皮膚が本来持っている自然治癒力を弱めるという考えもあるのです。ここでは、肌とpH値の関係について見ていきましょう。
◆人の肌は弱酸性
人間の肌はpH4.5~6.0位の弱酸性です。この状態だと肌の免疫機能(バリア機能)が最も高まるため、弱酸性が保たれることで雑菌の侵入や増殖を防ぐと言われています。従って、肌に塗ったりつけたりするものは、理論的には肌のpHに近いほど刺激が少ないことになります。弱酸性の石鹸や美容液などが広まったのはこのことが理由です。肌が弱酸性だから肌につけるものは弱酸性のものを、という話には説得力がありますね。けれども、例えば昔から使われてきた石鹸は弱アルカリ性です。それでは、「石鹸は肌に悪いのか?」という疑問が出てきます。
◆弱酸性神話とは?
顔を洗う時は専用の洗顔料を使うが、体は石鹸で洗うという人もまだまだ多いでしょう。これは理に適っています。肌の汚れや垢は弱酸性であることが多いので、アルカリ性の石鹸で中和することによって洗い落とせるからです。一般的な石鹸の主成分は、牛脂、ヤシ油、パーム油などの油脂に苛性ソーダなどの塩類を加えて作った「脂肪酸ナトリウム」です。これはpH10.3~10.5のアルカリ性を示します。確かに、アルカリ性のものを長時間皮膚に触れさせているとかぶれなどを起こしますが、水ですすいでしまえば自然に元の弱酸性に戻るので、特に肌に悪いとは言えません。こうした事実に触れることなく、「弱酸性=肌にやさしい」と決めつける考え方が「弱酸性神話」です。
◆アルカリ性と弱酸性、結局どっちがいい?
一方、ボディソープなどの弱酸性洗浄剤の場合は、合成界面活性剤という成分によって汚れを落とします。界面活性剤にはさまざまな種類があり、洗浄力の強いものは肌のバリア機能を傷つけてしまうものもあります。つまり、弱酸性だから肌にやさしいとは限らないわけです。もちろん、洗った後に石鹸と同じようにきれいに洗い流してしまえば、それほど害はないでしょう。結局、アルカリ性の石鹸を使っても、弱酸性の洗浄剤を使っても、きちんとすすいでしまえば肌は自然に弱酸性へと戻るのです。これは洗浄剤以外にも言えることで、例えば、肌にいいとされる温泉にはアルカリ性を示すものも少なくありません。逆に、肌を一時的にアルカリ性の状態にすることは、自然治癒力を働かせる意味でも重要という考え方もあります。弱酸性とアルカリ性、どちらの洗浄剤が肌に良い・悪いとは一概には言えませんが、どちらの考え方も知ったうえで、自分に合ったものを選ぶのが賢明といえるでしょう。
●南部洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師、株式会社とらうべ社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべを設立
Mocosuku編集部
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150316-00000008-mocosuku-hlth