東京電力福島第一原発事故で建設工事が中断していた福島県内の常磐自動車道のうち、常磐富岡―浪江インターチェンジ間が3月1日、開通しました。これで常磐自動車道は、埼玉県三郷市から宮城県亘理町わたりちょうまでの約300キロを結ぶ太平洋沿岸のルートが全線開通することになりました。都内から東北がぐっと近くなることから、再び多くの人たちが東北へ足を運ぶ機会が増えると思います。
そして、3月11日を迎えました。東日本大震災から4年が過ぎました。震災の影響はまだまだ大きく、いろいろな問題を残しています。これまでも、これからも、多くの支援が求められています。
そんな中、2016年春の北海道新幹線開業の準備のために、寝台特急「北斗星」(札幌―上野)は3月13日に、定期運行を終えます。1988年の青函トンネルの開業に合わせてデビューした「北斗星」の廃止によって、鉄道旅行の象徴的な存在だった青い客車の特急「ブルートレイン」の姿が消え、一つの時代が幕を下ろします。
さらに、3月14日、北陸新幹線が開業します。東京―金沢間が、最速2時間28分で結ばれるようになります。日本海が身近になります。昨年の夏に金沢を訪れたときは飛行機でしたが、今度、北陸新幹線で行きたいと思っています。
関東から北海道、東北、北陸への陸路が整備されて、どんどん高速化していきます。高速道路と鉄道の発展とともに人の流れも変わっていきます。違った土地での新しい人との出会いが、新しい考え方を生んでいきます。これは、漢方医学と栄養学との出会いや、漢方医学と緩和ケアとの出会いに似ています。
異なった考え方がうまく混ざり合うことで、新しい医学が生まれていきます。わたしは、五感を大切にする漢方医学と、検査データを重視する西洋医学を融合することが、現代医学だと考えています。
たとえば、100人の患者さんを診察したとします。全員、血液検査を受けていただき、健康状態を評価します。結果を聞きに行った皆さんは、「検査結果は、正常だから問題ありません」と医師に告げられます。そんなとき、みなさんはどう考えますか?
検査結果が正常だったとしても、実際には、体調が優れない方や気分が悪い方がお見えになります。わたしは、検査では見つけることができない不調を拾い上げていくことが、大切だと考えます。そのためには、時間はかかっても、一人一人の話を正面から聞くことが求められます。検査結果だけに左右されない姿勢を学ぶために漢方医学があります。漢方医学は、決して、難解な学問でもなく、難しい薬理学でもありません。漢方医学は、医師が一人の人間として、患者さんと向き合う大切さを教えてくれます。
あなたの体調管理をまかせている医師は、ちゃんとあなたの話を聞いてくれているでしょうか。検査データだけを見て、顔を見ない医師にかかってはいませんか。病気になったとき、真剣にあなたの立場になって考えてくれるでしょうか。
つらい震災を経験し、わたしたちはまた、一つ学びました。日本がいかに発展しようとも、原点は人と人のつながりであり、それを積み上げてきた歴史だということを。この震災を自分たちの文化や伝統の中に受け入れ、後世に残すことが大切だと思います。わたしも、大学で学んだ西洋医学に漢方医学を受け入れ、これからの医療に受け継がれていくものを残すことが大切だと考えています。
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