親なら誰しも、子供には元気で活発であってほしいと願うものです。しかし、ひとたび多動症かもしれないという疑念がわき上がると、元気な姿が違って見えてきてしまいます。それまでは、「すごく元気がいい」と思っていたのが、障害としての症状だったのかと落胆する母親が増えています。もし、子供が多動症であると診断された場合、状況に合わせて振る舞えるようになるトレーニングが必要になります。
◆注意欠如多動障害(ADHD)とは
多動症は、正しくは「注意欠如多動障害」(ADHD)と呼ばれる、多動性・衝動性と注意力の障害を特徴とする行動の障害です。学童期での出現率は3~5%、男児に多く、男女比は3~5対1と言われています。多動性では、座っているべき時や、大人しくしていなくてはならない時に、落ち着いていることができない、遊びなどに参加することが難しい、過度におしゃべりをするなどの、行動特徴が見られます。衝動性では、順番を待っていられない、他の人がしていることをさえぎったり、邪魔したりするなどの、行動特徴があります。注意力の欠陥では、話を聞いていないように見える、課題や活動を順序立てて行うことが難しい、必要なものをなくしてしまう、忘れっぽい、注意が長続きせず気が散る、といった行動特徴が見受けられます。
◆周囲の状況に合わせられるかどうかがカギ
これらの傾向は、大なり小なり子供には見られることです。では、単に元気な子と多動症の子の違いはどこにあるのでしょうか? それは、「周囲の状況に適合して行動できるかどうか」という点です。もっとも、幼い子供は周囲の状況に合わせるという考えが十分に育っていないため、はっきりそした診断を下せるのは3~4歳くらいになってからになります。実際には、小学校に入って、家族以外との社会生活が始まってから判明することが多いようです。
◆ADHDの原因は?
では、ADHDの原因は何なのでしょうか。従来は、家庭環境や教育の質のほか、生活習慣要因として食事や睡眠など、主に社会的要因にあると考えられてきました。しかし、現在は、遺伝要因や脳神経系の機能不全に原因があると見られています。もちろん、誘因としては社会的要因や生活習慣要因も無関係ではないと思われますが、産まれつきの素因が大きいという考え方が、現在の医学的な見解としては主流です。
◆ADHDや過度の元気さへの接し方
まだ診断がついていない時期でも、ADHDではないかという疑いを持つと、どうしても自分の子供の行動や反応に拒否的になってしまいがちです。その背景には、親として子育てに自信を失っているといったこともあるのかもしれません。しかし、この時期は、子供が本来持っている能力を発揮させ、自分自身の自己評価を高め、自尊心を培うことが大切です。そのために、親として生活技能訓練など多面的なトレーニングをしてやりながら、自らも関わり方を学んでいくことが必要です。一般的には、成長とともにADHDの症状は軽くなるようですが、それでも基本的な特徴を持ち続けることは多いようです。そのまま放置されると、反抗的になったり、不安や抑うつなど二次的な問題を引き起こしたりする可能性もありますから、専門家に相談しながら愛情を持って接してください。
●南部洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師、株式会社とらうべ社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべを設立
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