[ カテゴリー:福祉 ]

福祉や介護の場で求められる最先端のウェアラブル

みなさんは、インターネットにアクセスしたり、情報を得ようとした時に、不自由さを感じたことはないでしょうか。今回は、様々な情報に誰もがアクセスできるように、情報をバリアフリーにする「アクセシビリティ」に関する話題をご紹介します。

アクセシビリティという単語は、『iPhone』であれば、設定項目の中にある項目の一つであり、画面の表示拡大したり、内容を音声で読み上げたり、色を反転するといった、デバイスを操作するなどの補助機能だとご存知の方もいらっしゃるでしょう。もともとは視覚や聴覚の障がいで、情報機器の利用やネットのアクセスが難しい状況をサポートすることを意味していて、ユニバーサルアクセスと表現されることもあり、以前はどちらかといえば福祉的な使われ方をするものだと認識されていました。

外部デバイスとしては、点字で入力できるキーボードや視線とまばたきで動かすマウスなどがありますが、今でもその方向は最新技術の研究が進んでいて、最近では脳波で入力するというような方法まで登場していたりします。そこには、急速に進化する各種センサーやウェアラブル技術が大きく関わっていたりもするのですが、具体的にはどのような状況にあるのか。2月3日に神戸市で開催された『アクセシビリティの祭典』で、そんなアクセシビリティの現状に関する話と実際の機器を取材してまいりました。

オープニング対談「未来のアクセシビリティを考える」では、ウェアラブルグラスの研究でおなじみ神戸大学の塚本昌彦教授と、ウェブアクセシビリティのポータルサイトを運営するインフォアクシアの植木真氏、そして、IT技術コンサルタントでHTML5-WEST.jpを主宰するバスタイムフィッシュの村岡正和氏が、ハードウェア開発とウェブ技術とコンテンツ制作の方向から、それぞれのアクセシビリティへの対応状況を紹介されていたのが興味深かったですね。

塚本教授によると、ウェアラブルと福祉機器の開発者は以前から交流があり、過去にNTT西日本がヘッドマウントディスプレイを装着した障がい者を遠隔からサポートするという実験は、それなりに評価されていたという話もあるとのこと。最近は、音声認識技術の向上で、ウェアラブルで聴覚障がい者のリアルタイム通訳をしたり、カメラで手話を読み取ってテキストや音声に変換する研究も進められているそうです。他にも、ウェアラブル国際会議では、磁気のついた舌ピアスで口の中の動きを『Google Grass』でセンシングして、発話に変換するという奇抜なアイデアも発表されていたのだとか。

Googleはすでに音声認識でウェブ上の映像にリアルタイムで字幕を付けられる技術を公開していますが、それをさらに進化させた、ディープラーニング技術で動画の内容をコンピュータが自動で解説するという研究も進めています。「Google Transrate」は、画像やリアルタイム音声から多言語翻訳できるようになったが、先日、一般向けの開発が一旦中止された『Google Grass』は、福祉方面の機能を全面に押し出していれば、今とは違う方向に進んでいたかもしれません。

Googleは看板やポスターの文字を画像認識するのに加えて、リアルタイムに翻訳できるアプリを最近公開したばかりだ。さらに植木氏が紹介していた、発話ができない人の声のパターンを分析してテキストに変換し、その上でその人の声に近い音声でも再現する「Talk Kitt」という技術も興味深く、こちらは現在、スマホでの実用化が進められているということでした。

「Talk Kitt」は、障がい者だけでなく、病気や高齢で声が出にくい人たちにとっても応用できる技術でもあります。その人に近い声で発話できるというのは、精神的にもコミュニケーションの上でも重要なポイントであり、デジタルとヒトの境界をシームレスにするアクセシビリティの研究がこれから重要視されそうです。

■福祉や介護の場で求められる最先端のウェアラブル

イベント会場では、アクセシビリティの現場で使われているウェアラブルやデジタルデバイスなどがいくつか展示されていて、実際に体験することもできるよういなっていました。見た目は普通のメガネのカタチをした「Oton Glass」は、文字を読むのが困難な失読症患者(ディスレクシア)をサポートするためのウェアラブルグラス。メガネを使って読んだテキストを音声変換して耳で聴かせてくれるデバイスで、開発者のお父さんが病気で文字が読みにくくなったのがきっかけでアイデアを思いついたそうです。

前述の『Google Grass』はこの方向だったら受け入れられたのでは? という機能がそのまま搭載されていて、現在は有望なイノベーションをサポートする、ドコモ・イノベーションビレッジの第3期シードアクセラレーションにも選出されています。

システムデザイン・ラボが出展していた「テンプラー筋電車いす」は、頭に装着するギアでこめかみの筋肉の動きを拾って、歯を噛む動作で動かす車いすです。右奥歯を噛むと右に、左奥歯を噛むと左、全体をぐっと噛みしめると前進し、さらにダブルクリックのように歯をカチカチとさせると前後が切り替わる、というシンプルな操作で誰でもすぐに動かすことができます。面白いのは、車いすに乗っている本人が動かすこともできますが、ギアをつけた人が離れた場所から動かすことができるので、介助する人も疲れにくく、両手が使えるのでサポートの幅も拡がります。 会場では脳波でドローンを動かすデバイスも紹介されていましたが、こちらはまだ安定が難しいところ。そういう意味でもこめかみで操作できる車いすは実用性が高そうです。

他にも『iPhone』や『iPad』のカメラを使って顔を認識し、左右に振る動きで電子書籍のページがめくれるアプリ「Magic Reader」や、2016年の一般向け製品リリースを目指して開発中のウェアラブルグラス「Mirama」のプロトタイプなども展示されていましたが、ここ数年の間に一般の展示会で見られるものばかり。福祉寄りだったアクセシビリティのための機器が、一般商品として開発されるようになっているのがよくわかりました。

面白かったのは、これまで福祉向けという発想だった技術を逆に健常者向けに応用した「TENJI-Block」という点字ブロック柄のiPhoneケースで、街中で目にしながらあまり意味が知られていないブロックの意味がわかるようなデザインになっています。ブロック部分を点字にしているので、双方向デザインだと言えるかもしれません。テレビが聞けるラジオは通常は視覚障がい者向けで使われますが、非常時に活用でき、最近流行っている、ドラマやアニメでの副音声機能を使ったテレコメンタリーを聞いたりするのにも便利かもしれません。

このようにアクセシビリティは、リアルな生活を支える役割を果たしていますが、実はバーチャルなネットの世界でも大きく注目を集めはじめています。オープニング対談の最後のまとめで村岡氏は、「ウェアラブルはリアル世界のアクセシビリティを高める役割を果たしているが、今後、データがよりアクセシビリティになることで、IoTもリアル世界をサポートするようになるだろう」とコメントしていましたが、これからアクセシビリティが必要とされるのは、人間以上にコンピュータ=マシンなのかもしれません。

アクセシビリティには、デジタルデータへのアクセスを可能にするマシンリーダブルという意味も含まれていて、本イベントではそうした話題も取り上げられていたのですが、そちらの話については、あらためて紹介させていただきます。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150306-00010002-dime-sci

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