介護保険を使って受けられるサービスの価格「介護報酬」が4月から改定されます。今回は平均2・27%の引き下げと、9年ぶりのマイナス改定でした。これに伴い、介護サービスを利用するときの負担はどうなるかなど、介護現場への影響を3回に分けて検証します。まず、特別養護老人ホーム(特養)などに入所する「施設サービス」について考えてみます。
-そもそも、どうして介護報酬を引き下げるの?
介護報酬を上げれば介護サービスは充実されるけど、利用者負担や介護保険料、税金での負担も増えます。超高齢社会の日本の介護費用は年々膨らんでいる一方、介護費を支える現役世代は減っているため、介護費全体の伸びを抑える必要があるとされています。
-介護報酬が引き下げられると、利用者負担は減るの?
そうです。今回は全体的に基本報酬が引き下げられたので、利用者負担(介護報酬の1割)もおおむね減ります。特に、特養が6%程度の引き下げなど、施設サービスは下げ幅が大きいため、厚生労働省は施設入所者の負担は軒並み減ると試算しています。
例えば、定員80人の特養の個室に入所している要介護5の人の場合、現在の自己負担は月額3万1530円ですが、4月からは月額3万720円と、810円安くなります=イラスト参照。基本料が月額で1万5900円減ったことが大きいですね。
-利用料が減ると助かるけど、施設の経営は大丈夫?
介護報酬が減ると、事業者収入も減るため、反発の声が上がっています。福岡県内で特養を運営する社会福祉法人理事長は「報酬が減れば、人件費を抑えざるを得ない。必然的に介護サービスの質が低下する」と嘆いています。
半面、特養にはみとり介護の体制を構築・強化した場合の「みとり介護加算」などが拡充され、こうしたサービスを充実すれば報酬を増やすことができます。
-「人手不足」という話も聞くけど、大丈夫?
施設に限らず、介護業界は慢性的な人材不足が懸念されています。このため、基本報酬引き下げで介護職の賃金が下がらないよう、職員の研修実施や子育て支援整備などの要件を満たせば、支給される「介護職員処遇改善加算」が拡大されました。厚労省は常勤職員1人当たり月1万2千円の賃上げになると見込んでいます。
ところが、この加算の対象は介護職だけです。施設で働くのは、介護職のほかに看護職、事務職など多岐にわたり、全職員を賃上げできるかどうかは不透明です。本当に賃金アップにつながるかどうかのチェックは必要です。
-自己負担が減るなら、とりあえず利用者には朗報だね。
そうとも言えません。特養に関しては全国に入所待機者が約52万人とされていますが、特養の経営が厳しくなれば新設が難しく、待機者がさらに膨らむことが予想されます。
特養の相部屋入所者は4月から光熱水費が値上げされ、8月からは一定の収入があれば新たに室料(1日470円)が徴収されます。また、介護サービスの自己負担割合は一律1割ですが、8月から一定以上の所得があれば、2割に引き上げられるため、実質的な負担が増える人も出てきます。
=2015/02/19付 西日本新聞朝刊=
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150224-00010002-nishinp-hlth