執刀中に急患/患者にX線写真
金沢大病院(金沢市)が、医師らが手術室や集中治療室(ICU)で携帯電話を使えるとするガイドラインを整備し、運用を始めた。手術室などでの一般の携帯使用は、国や通信業界でつくる電波環境協議会(東京)が昨年示した指針で原則禁止としたが、金沢大病院はNTTドコモと共同実験を行い、病院内の電波出力制御策を講じたことで安全が確認できた、としている。電波行政を所管する総務省・北陸総合通信局は「独自の実験結果を踏まえており全国の医療機関の先進事例になる」としている。(石井真暁)
金沢大病院や総務省によると、ガイドラインによって、病院内でほぼ制限なく携帯を利用できるようになり病院、患者双方にさまざまなメリットが生まれる。病院は急患発生時に、別の手術室などにいる医師を、医療機器への影響などを気にせず呼び出すことができる。
看護師が病室で患者に症状を尋ねながらタブレット端末にデータを入力したり、ベッドから動けない患者に医師が携帯でエックス線写真を見せることも可能になり、労働効率も上がる。入院患者が、ナースコールを押すほどではないものの看護師に体調について相談したい場合、メールなどを使って意思疎通を図ることもできるようになる。
ガイドラインは昨年十一月に運用を開始。「電波で誤検知が起きる可能性がある体外式ペースメーカーを使用する患者がいる場合、半径一メートル以内では使わない」「ペースメーカー使用患者搬送時は半径一メートル以内に携帯を入れない」などのルールを定めた。手術室やICUを含む院内全域で同様に運用している。
金沢大病院はドコモの研究機関「先進技術研究所」と二〇一一年八~九月に共同実験を実施。手術室やICUで使う電気メスや超音波エコーなどの医療機器に携帯から最大出力などで電波を照射、臨床工学技士や医師が干渉具合を判定した。
体外式ペースメーカーから三十センチの距離で断続的に流し続けると誤検知を起こす例もあったが、距離を保てば安全と判断した。病院内にはドコモの携帯の電波出力や周波数を制御する基地局も配置した。このため手術室などではドコモの携帯のみ使用できる。
病院内の携帯使用は電波環境協議会が昨年八月、約十七年ぶりに使用制限を大幅に緩和する指針を公表。一般の携帯は待合室や病室で電話やメールができるようにした。
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