子育て中の母親を中心に、刺繍(ししゅう)やビーズ、編み物など手芸がブームになっている。東日本大震災をきっかけに人の手のぬくもりが伝わる手作り品の良さが見直されたことに加え、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及で多くの人が作品を共有できるようになったことが背景にあるようだ。(油原聡子、写真も)
■色彩、手触り…「癒やし効果」も
「数年前から、若い世代で手芸を始める人が増えてきました」と話すのは、日本ホビー協会(東京都台東区)の築根弘専務理事だ。
築根専務理事によると、手芸は集中して作業したり、色彩豊かで手触りのいい生地や毛糸などの素材に触れたりすることで癒やし効果が得られるのだという。
米国では同時多発テロをきっかけに手芸の癒やし効果が注目された。日本でも東日本大震災を機に、手作りの良さが見直され、手芸人気が高まったという。
同協会が主催するアジア最大級の手作り品見本市「日本ホビーショー」の来場者数も増加傾向にある。平成16年は約10万2千人だったが、震災後の24年は約13万3千人と過去最高に。26年も約12万5千人だった。
来場者も50代以上の女性が中心だったが、30代が増えているという。築根専務理事は「手軽にできる手芸のジャンルが増えた。携帯電話など既製品をラインストーンなどでデコレーションする若い人が増えたことが大きい」と分析する。
同協会の「ホビー白書2014」によると、ビーズや革細工など「趣味工芸」の市場規模は、24年の480億円から25年は492億円に拡大している。
■子育て中でも作品を共有
SNSの普及もブームを後押ししている。
博報堂DYグループ(港区)の社内ベンチャーとして25年に始まった手芸ポータルサイト「ステッチステッチ」では、企業が作品のレシピを販売している。会員が作品をアップし、コメントを書くことも可能だ。
レシピ数は増加しており、現在、登録されているレシピは約3800にのぼる。
ステッチステッチの小田則子社長は「SNSで他の人の作品を見て、自分も作りたいと考える人が増えている」。
タレントの千秋さんがプロデュースする手作り雑貨の販売プロジェクト「ハロー!サーカス」は、手芸の才能があるのに生かす機会のないママ友に、作品を発表する機会を提供しようと始まった。多くの子育て中の母親が参加し、昨年12月には渋谷ロフト(渋谷区)で期間限定ショップも開かれた。
手芸ブランド「流流」を手がける、作家のえりこさん(37)は、同プロジェクトへの参加をきっかけに、渋谷ロフトでブローチの販売を始めた。
手芸好きの母親の影響で、小さいころからアクセサリー作りが趣味。2人の子供の子育て中で、家事の合間にビーズ刺繍のブローチを作っている。「作品を通じ、社会とつながることで得られる満足感がある。自分を表現して認めてもらえてうれしい」とえりこさんは話している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150208-00000532-san-life