若手マザーの中には、子育ての仕方がわからず、周りの助言にも恵まれないケースも多い。そこで、『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』の著者であるムーギー・キム氏の母親で、子どもを国際弁護士、国際金融マン、海外著名大学教員、公認会計士に育て上げた著者が、読者の皆様からの子育て相談に回答する。
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前々回は 実母が根っからの詐欺師、どうすればいい?
【読者からの相談】
パンプキンさん、今、私は精神的に落ち込んでいるところで助言をいただきたく、わらをもすがる思いでメッセージさせていただきました。
私は、地方都市に住む者です。先日、小学校6年生のひとり娘が私立中学を受験して、昨日結果が出たのですが、 桜散りました。
娘は、生まれが小さいうえ精神的にもまだ幼く、学校の成績も決して長けているわけではありません。が、吹奏楽を続けていることや幼稚園がカトリックだったこともあり、ある学校の教育理念などを家族で何度も総合的に話し合ったり、オープンスクールに見学に行ったりした結果、その中学校を受験することに決めて、本人も塾に勉強に頑張っていました。
しかし、家族が本当に一丸となってサポートしたのですが、娘のその頑張りが間に合わず、不合格通知がきてしまいました。本人に不合格を伝えたところ、普段から楽観的で明るく、悔しいとか悲しいとかそんな感情を表になかなか出さない子が、涙をポロポロポロポロ流して泣くのです。
たった12歳でひとりで受験を戦い、成績が及ばなかったのですが、娘が悲しく悔しく流す涙は 12年間で2回しか見たことがなかったぶん、本当に辛いです。母親としての私も、いろいろなことで力不足だったと思います。
今後公立中学校で、再度3年後の高校受験を目指し、将来の目標に向かって全力で娘をサポートしていくことになります。彼女の人生なので親が完全にレールを敷くことはできません。選択すべき道もたくさんあると思いますが、高校受験まで将来の夢に向かって勉強のできる学校へ進学できるようにするには、どのような子育てを心掛ければいいのか、アドバイスをお願いします。
私の周りには、気兼ねなく話せる志高いママ友だちがおりません。中学受験も情報収集からメンタルの支えまで、夫と私で2人3脚の状態でした。必ず返信くださいますよう、お願いいたします。
三井田(仮名)
【パンプキンからのコメント】
またまた今年も、幼いお子さんたちが涙を流す季節が訪れたのですね。さまざまな親子の悲喜こもごもをみてきましたので、三井田様のお気持ちもいかばかりかと、お察し申し上げます。
ただ、若いうちというか、幼いうちから挫折と悔しさを経験するのは人生の肥やしになり、あまり不敏がってもいけません。むしろ悔し涙が出るくらい頑張ったことを肯定的にとらえて褒めてあげることが、今の年齢のお子さまですと大切なことだとも思います。
サポートとプレッシャーの違い
ところで、三井田様のご相談文を拝読しまして私がまず感じましたのは、三井田様ご夫妻のお嬢さまへのサポートが、サポートではなくお嬢さまより先に走り過ぎていたのではないかということです。
お子さまの性格により、受験勉強も親が密着して手助けするほうがうまくいく場合から、ほとんど構わなくとも子どもが責任を持って頑張る場合までいろいろです。前者の場合も、あくまでも主役はお子さまです。「本人は頑張っていたのに、母親としての自分もいろいろと力不足だった」と反省しておられるので、これからはますます子どもと一緒になって、受験勉強に力を入れられるのでしょうか。
過去にも例に出しておりますが、馬をどんなに安全な道を選んで水飲み場まで連れて行ったとしても、水を飲むのはあくまで馬で、人が代わりに水まで飲んでやることはできません。
受験勉強も同じで、家族の受験への思いがいくら強くても、受験するのは本人です。「家族が一丸となって、サポート」されたのに「力不足」を感じておられるということは、これからはさらに確実な水飲み場までの道や水の飲み方を、親が見つけてあげようというものでしょうか?
私は、頑張ったのにその努力が報われなかったお子さんがふびんで、涙を流された親御さんをたくさん知っています。その方たちのその後ですが、中には受験生本人より親がショックを受けて、寝込まれた人もいました。
親子の目標が、医者になることで一致していた上田くん(仮名)は、第1志望校の中学合格が確実視されていたのにダメでした。上田くんのママはしばらく寝込み、子どもが可哀想で仕方がないと、私への電話で延々と泣いていました。そんな親を横目に上田くんのほうが立ち直りが早く、すぐに塾を決め、休む間もなく勉強を始めました。
子どもに引っ張られて親も立ち直り、子どもの後ろから親がついていく形で食事の世話だけに心を砕いたそうです。上田くんは見事に最難関校に合格し、今では立派なお医者さんです。
神山くん(仮名)は医者の息子です。猛烈な教育ママの先導もむなしく中学受験に失敗しました。その後、神山くんは高校受験にも「失敗」し、医師にはなれませんでした。神山くんは医師には向いていなかったけれど努力家でしたので、きっと何かで身を立てたはずなのに、何が何でも医者にさせようとした母親のミスリードで、何にもなれなかったともっぱらの評判です。
今回は極端なお2人を紹介しました。特にお子さんの能力差や向き不向きの問題も考慮に入れるべきでしょうが、ここでもうひとつ顕著な違いがあります。前者は子どもが自覚と責任をもって勉強していて、親はあくまで生活面のサポートだけで、後者は親が欲張りすぎて、あるいは子どもの希望や特性を無視してリードし、子どもがついていけなかった点です。
親の固定観念が子どもを追い詰める
三井田様、お嬢さまは吹奏楽を頑張っておられ、それを伸ばしてあげたくて選択した中学受験だったのですね。ここでちょっと横着なアドバイスに聞こえるかもしれませんが、もう少し親のほうが肩の力を抜いてお嬢さまと接するように、ギアチェンジされることをお勧めします。
小学生時代の「将来の希望」は、これから何度も変わる可能性があります。早期教育がモノをいう音楽家や、フィギュアスケーターなどのような専門を除き、夢がころころ変わること自体は、不自然なことではありません。
子どもさんによっては、力をいちばん発揮する時期が異なるものですので、断定する必要は全く無意味です。しかし、親の目から見て「成績が長けているほうではない」お嬢さまを、「将来の夢に向かって」何が何でも「勉強ができる高校に」と親子で目標を定めるのは、あまり賛成できません。
文部科学省の諮問機関である中央教育審議会が最近示した方向性をみますと、お嬢さまが大学受験される頃には、今よりもっと暗記重点でない、記述式の力が問われることになっていそうです。記述式といえど、今問われている基礎学力が大切なのはいうまでもありません。受験科目一辺倒でない幅広い経験や学び、そして何が得意かなどを見極めることが、「勉強ができる」という内容としてますます重要になってきそうです。
そして昨今の人気のある大学を見ていますと、必ずしも偏差値の高い順番ではなくて、成熟した社会特有の多様な価値観や、子どもたちのさまざまな夢や希望の実現に沿ったカリキュラムや施設の充実などが反映されたものになってきています。
志望校を定めて勉強することは必要ですが、どうしてもここでなくてはダメという悲壮感を持って定めたり、わらにもすがる気持ちで親がうろたえるのは、お嬢さまにとってよくありません。夢や学校の選択肢が、これからはもっとバラエティに富んでいくことを視野に入れて、志望校の選択肢も親の姿勢として広げておくほうが現実的です。
志望校の決め手にカトリック教育が入っていたようですね。私は幼稚園から高校まで、仏教・キリスト教・無宗教のいずれをも子どもを通して経験しましたが、それぞれにいいところがあって、多くの子どもさんにとっては、さほど大きな影響の差はないと感じたことを申し上げておきます。
おっと、こんなことを言えば、どこかからまたしかられそうですが、現在、家族の方が特に決まった信仰をお持ちでないのでしたら、これももっと柔軟に考えましょう。
志の高いママ友の話ですが、いなくて良かったですよ。私の地方特有かもしれませんが、ママ友は得てしてライバルです。情報の共有よりは、ライバルを油断させる話のほうが多くて、私はあまりつきあいませんでした。
教育は闘争目標ではなく、ギフト
お子さまの受験を夫婦一丸となってサポートされた件ですが、お嬢さまにとってはある意味、息が詰まる環境ではなかったでしょうか?
お嬢さまが流された涙の中には、親の強い期待と応援に応えられなかった申し訳なさも入っていたのではないかと想像します。思春期を迎える今後は、子どもに負担を与えるようなアプローチは逆効果になる場合があり、要注意です。
親が応援したくなるほど吹奏楽に頑張っておられるお嬢さまは、とても素晴らしく努力家でもあると思います。そんな娘の力をもっと信じ、「これからはそれを伸ばすのもほかのことに打ち込むのも、選択は全部、子どもに任せる」という教育方針に変更することをお勧めします。
情報を集めたり、それをお嬢さまに伝えるのも、あくまでもさり気なくタイミングを推し測り、選択も決定も責任もすべて主役はお嬢さまであることを、家族で徹底すべきです。教育は親子の闘争目標ではありません。親から子へのギフトです。ギフトは押しつけではなく、さり気なくされてこそ嬉しいものですね。
三井田様のお嬢さまの場合、親はわき役に徹し、後ろから見守るという距離のほうがうまくいくのではないかと想像します。「結果より、健康で目標にチャレンジする努力が娘にとって、充実した生活をもたらすものであれば、親はそれで十分満足」というメッセージを、食事の内容と時間に気を配ることで伝えましょう。
まずは母親が肩の力を抜いて、子どもの自主性を背後から応援することです。親のサポートも、力み過ぎればありがた迷惑なプレッシャーに早変わりするのですから。
※ ミセス・パンプキンさんへの相談はこちら
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