「ドクターヘリ」の出動件数が2013年度、初めて2万件を超えたことが、専門医らでつくる「日本航空医療学会」の調査でわかった。
迅速な初期治療や搬送時間の短縮で救命率アップなどに大きな成果を上げており、大災害発生時の患者搬送にも期待が高まるが、費用負担や操縦士不足など、需要の高まりに伴う課題も浮上している。
◆「命の恩人」
「市原、60歳代男性、脳卒中の疑い」。昨年12月、千葉県印西市の日本医科大千葉北総病院。ヘリを要請する消防からのホットラインが鳴り、救命救急センターの医師や看護師がヘリポートへと走った。約3分後には離陸。その18分後には、約37キロ離れた同県市原市の小学校校庭に着陸して救急車で運ばれてきた患者を収容し、医師らが初期治療を行いながら、同市内の医療機関に運んだ。
同病院のドクターヘリ導入は2001年10月。13年度の出動件数は、02年度の約2・3倍の1053件に上る。「医師が早期に治療を行えるかどうかが、患者の生死や後遺症の程度に大きく影響する」と同病院の八木貴典医師(44)は言う。
八木医師は昨年4月、同県酒々井町の大学2年生女性(20)がアルバイト先に向かう途中にバイクで転倒した現場へ、ヘリで急行。腹痛を訴える女性を治療しながら病院に空路Uターンした。内臓損傷の重傷だったが速やかな手術が奏功。日常生活に支障がないほどまで回復した。
女性は「ヘリがなければ死んでいたかもしれない。ヘリを要請してくれた救急隊や病院の先生方は命の恩人」と振り返る。
◆36道府県に43機
NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク(東京)によると、ドクターヘリは、1995年の阪神大震災で陸上交通網が寸断された教訓から導入が検討され、99年に試験運航、2001年に本格運航を始めた。
同ネットワークの調査では、ヘリ導入で従来の地上救急より救命率が3割以上向上し、完治して社会復帰できた患者も約1・5倍に増えたとされる。現在、36道府県で43機が配備。ヘリ導入を推進してきた日本航空医療学会によると、02年度に全国で2302件だった年間出動件数は13年度で2万632件に増えた。
同学会の小浜啓次理事長(76)は「ドクターヘリの必要性が広く認知され、ヘリを要請する消防と医療機関の連携や、隣県同士の協力が進み、出動件数が増加している」と分析する。
(2015年1月20日 読売新聞)
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