かつては「汚い」といわれ、避けられていた公共施設・商業施設の公衆トイレ。小さな朝顔形の小便器、かがむと腰が痛くなるような和式の大便器。「外でトイレにいくのが嫌だ」という人も多かったはずだ。ところがここ最近、公共施設・商業施設のトイレが快適な空間になっている。洋式便器はあたり前、ウォシュレットも完備しているだけではなく、デザインにも工夫をこらしている。変わりつつある公共の場のトイレとは?
[写真]季節柄クリスマスツリーを飾っておもてなしも(提供:イオンモール)
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イオンモール岡山のトイレが話題に
2014年12月5日にオープンしたイオンモール岡山。利便性の高い岡山駅前にあり、西日本の旗艦店と位置付けられる。オープンとともに、同店の女子トイレがインターネット上で話題になった。
3階の「haremachi Beaute」というビューティー関連のフロアにあるトイレに併設されているパウダールームで、白を基調とした家具に明るくライティングされた鏡台、そしてオーナメントの数々がそろっており、快適に過ごせるよう工夫されている。季節柄、クリスマスツリーも飾られた。
イオンモールによると、「その他のフロアのトイレはフロアに合わせて整備している」とし、話題になった女子トイレだけでなく、各フロアまったく異なるトイレとなっているという。「お子様向けのトイレや、デザインをこらした男性向けのトイレもあります」と同社。「岡山に限らず、デザインやお客様の利便性を考えてトイレを整備しています」と強調する。
トイレ専門の設計事務所
公共のトイレに求められる“利便性”とは何なのか? 「トイレ作りに携わっているうちに、トイレは一息ついて元気を再生する場所として求められていることがわかりました」と話すのは、東京都文京区にある「設計事務所ゴンドラ」の小林純子代表だ。
同設計事務所は、各公共施設・商業施設が快適な空間としてのトイレ作りに力を入れている。これまでに、京王百貨店新宿店のトイレ改装をはじめ、東京湾アクアラインの「海ほたる」、福岡県北九州市の百貨店「小倉井筒屋本店」、阪神百貨店梅田店、札幌市のJRタワー、JR東京駅の黒塀横丁など、数々のトイレの設計を手がけてきた。
小林代表は「トイレは、ほかの設備に比べて遅れており、手がついていませんでした。トイレというのは面白いもので、一人ひとりトイレに対する考え方が違います。現実のトイレは画一的ですが、本来はそれぞれが求めているものが違うのではないでしょうか」と話し、単に清潔なトイレを目指すのではなく、その場所のコンセプトにあった独特の意匠と、徹底した使いやすさにこだわっている。
同社の設計理念に「トイレをまちのオアシスにつくりかえる」という言葉がある。公衆トイレというのは、誰にも開かれ場所であり、安心して自分を開放できる場でなければならないというわけだ。安全性はもちろん、清潔さ、ゆとり感が必要だと同社は考える。
実際に、筆者も同社設計のトイレにいくつか入ったことがある。ほかのトイレとは快適さがまったく違い、何度も通っているトイレもある。ストレス社会、忙しい日常。そんな中でトイレに入ってホッとする。
公共施設や商業施設において、確かにトイレは、直接利益を生み出さない場所だ。しかし、トイレが快適な場所であればあるほど、その場所に元気がみなぎってくるのかもしれない。
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