文部科学省が19日に公表した公立小中学校統廃合に関する実態調査で、7割以上の市町村で、児童生徒がが少なすぎるなど適正規模でない学校があることが明らかになった。文科省は小学校では6学級以下、中学校では3学級以下について統廃合を含めた検討を促したが、地域の反対や防犯、安全性の確保などが統廃合の壁となるケースが少なくなく、現場からは「容易ではない」との声も漏れる。
文科省が作成した小中学校の統廃合に関する手引きでは、学校小規模化の問題点として、(1)クラス替えができず人間関係が固定化する(2)社会性やコミュニケーション能力が身につきにくい(3)切磋琢磨(せっさたくま)する環境の中で意欲や成長が引き出されにくい(4)多様な物の見方や考え方に触れることが難しい-などを挙げる。
さらに調査では市町村の8割がこうした課題を認識しながら、約半数が課題解消の検討をしていないなど、学校現場の状況も明らかになった。
だが、文科省が検討を求める統廃合には、大きなハードルがあるのも事実だ。東京都文京区では、約10年前に、10年間で小中学校の統廃合を進める計画案を策定した。3校を1校に統合する案があるなど大胆な計画だったが、地域の理解が得られず、わずか1年後に凍結に追い込まれた。
区関係者によると、この区では、創立100年以上の伝統校などが多かったため、卒業生や保護者ら地域の関係者が「母校をなくさないでほしい」と強く反発。その声に押され、区議会でも反対の声が強く、結局、廃案になった。区関係者は「子供の教育条件を考えれば、統廃合を進めたかったが、反発が予想以上に強かった」と振り返る。
区教委によると現在は、子育て支援策の充実などによる影響からか、就学前の子供が増えているといい、逆に教室が足りない小学校もあるという。東京都内のある元小学校長は「大規模マンションが建設されれば、子供はあっという間に増えるし、人口推計などをもとに検討したとしても、学校統廃合の問題は容易ではない」と話す。
保護者が通学距離が伸びることに不安を感じるほか、地域の核として防災拠点になっている学校施設が減少することを懸念する声があることも、学校統廃合が進まない原因だ。
相模原市は“平成の大合併”で、津久井郡4町(城山町・津久井町・相模湖町・藤野町)を編入合併した経緯を持つ。なかでも旧町地域では児童数の減少が進み、現在は藤野地区の小学校3校と中学校1校、城山地区の小学校1校が民間バスを併用したスクールバスを導入している。市教委によると、旧町地域は、中山間地域にあたるため、距離だけでなく、防犯や安全性確保の観点から導入したという。
担当者は「児童・生徒の安全や活力ある地域づくりを考えるならば、学校間の連携を強化するなど学校数を減らすだけではない対策を考える必要がある」とし、学校統廃合の難しさを強調した。
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