「成績が伸びない」「勉強が嫌い」「反抗ばかりする」。「思春期の女の子をもつお母さんには共通した悩みがある」と、聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校校長の長野雅弘氏(以下、長野)は言います。
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長野は校長の職にありながら、聖徳大学児童学部で教鞭に立っています。教育者としてのキャリアも一貫して女の子の教育であり、教頭として赴任した学校では1年目に大学進学実績を5倍に引き上げるほか、部活動でも廃部寸前からインターハイ出場の強豪に育て上げるなど文武両道で高い成果をもたらしました。
その後も、長野が赴任した先は「近隣他校の手本」とまで言われています。今回は「子供を伸ばすヒント」についてお聞きしてみました。
●先生のロウソクに火を灯す
長野は自らが教鞭に立っている経験から、先生の意識が大切だといいます。「心のなかのロウソクに火を灯すこと」が大切だと。
長野 どんな先生も、「先生になりたい」「子どもの成長に役立ちたい」など、なんらかの目的があるロウソクを持って教師になるものです。ところが、心のロウソクの火は、あっという間に消えてしまうことがあります。その場合は、新しい目標や原動力を用意して再び火を灯さなくてはいけません。先生が情熱を燃やせば、その気持ちが生徒にも伝わるものです。
—気持ちが行動や成果に与える影響は大きそうですね?
長野 これは先生だけではなく、子供にも同じことがいえます。できない子に、どんなに「勉強しなさい」「少しは勉強しなくちゃだめでしょう」と言ったところで何も解決はしません。まず必要なのは「勉強をする気にさせる力」です。それは、その子の心の中にある「志」という名前の大きな石をゴロンと動かすことです。人生をつくるのは「志」です。まずはその石を動かすまでが大変です。
石は魔法の呪文では動きませんし、誰かが唱えてくれることもありません。自分の意思で動かすしかありません。いつ何がきっかけで石が動くか分かりませんが、小さな成功体験を積み重ねることで導くことができます。一旦動いてしまえば速いのです。これを辛抱強くできるのが素晴らしい先生です。先生の心のなかのロウソクに火が灯っていれば、「その子を良くしたい」「その子のために役に立ちたい」という思いを行動にうつすことができます。
●感動を製造する
—次はテクニカルな話を聞きます。勉強は「予習、復習をしっかりすることが大切」というのは良く知られています。どちらか一方を選びなさいと聞かれたらどちらを選べば良いのでしょうか。
長野 時間が無限にあるのなら、両方やったほうがいいですが時間は有限です。実は使える時間は多くはないものです。勉強に集中する時間にも限界がありますから、わずかな時間に予習も復習も詰め込むことは、少し無理があるのです。私は、どちらか一方を選びなさいと聞かれたら迷わず「復習」と答えます。「人間は忘れやすい動物」であること。だから忘れないうちに、できればその日のうちに復習したほうが効果的です。
復習の基本は授業をしっかり受けることです。先生が黒板に書いたことは、すべてノートに書き写します。先生が話した大切なこともノートに書き写さなくてはいけません。そして復習の際には、授業の内容を思い出すようにします。覚えたこと、思い出したことが定着しているかどうか、今日の範囲の問題集をやっておくのが良いでしょう。思い出すことで反復学習の効果が得られるのです。繰り返すことで理解は確かなものとなるでしょう。
—最後に今後のビジョンについてお聞かせください。
長野 私は、校長を務める取手聖徳を「感動製造工場」と表現しています。感動は人を動かす原動力です。心というエンジンを動かす燃料のようなものです。しかし、それゆえに燃え尽きやすいのもまた事実。だから私たちは、継続して感動を提供し続けなくてはいけません。子どもが楽しく学び、知る喜び、感動を家に持ち帰ることを希望して「感動製造工場」という表現をつかっています。
大切なことは「子供はほめて伸ばす」ということ。ほめると幸福感が持続して、ストレスに強い抵抗力を持ち、前向きになり、やる気が出るようになります。だからほめましょう。先生はそのために、朝のホームルームや授業で大変苦心しています。実はそれが重要。先生と子供の意識の相乗効果で「あの子がここまで伸びた!」「あの子がこんなに?」という出来事が毎日どこかで起きています。それを目の当たりにするクラスメートや先生たちの心にまた感動が生まれます。
—有難うございました。
この機会に、いま一度、働く意義やマネジメントの意義について再確認してみては如何でしょうか。知らなかった気づきが見つかるかも知れません。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141219-00010002-agora-soci