[ カテゴリー:福祉 ]

白熱したブラインドサッカー世界選手権 松原渓のスポーツ百景

■初の日本開催となった世界選手権

ブラインドサッカー世界選手権が11月16日(日)から24日(月・祝)まで東京・国立代々木競技場フットサルコートで開催された。

今大会は史上初の日本開催ということで多くのメディアにも取り上げられていたため、映像などを初めて見て、ブラインドサッカーを知った方も多いのではないだろうか。1980年代初頭に始まり、南米やヨーロッパを中心に発展したブラインドサッカーは、2004年アテネパラリンピックから正式種目として採用された。

日本代表は2006年アルゼンチン大会(8カ国中7位)から参加し、2010年イングランド大会(10カ国中8位)にも出場している。そして、3度目の出場となる今大会での目標はベスト4。その先に見据えるのは、2020年東京オリンピックでの「世界一」だ。先月の2014アジアパラ競技大会では銀メダルを獲得するなど、チームの強化は着々と進んでいる。

世界選手権はサッカーで言えばワールドカップに相当する大きな大会で、今大会は南米、ヨーロッパ、アジアから過去最多の12カ国が参加した。

会場は若者の街・原宿から徒歩圏内にある国立代々木競技場フットサルコート。ここに特設コートが作られ、9日間にわたって強豪国の白熱した戦いが繰り広げられた。

ブラインドサッカーのルールや競技の見どころなどは前回の記事(http://dosports.yahoo.co.jp/column/detail/201409260001-spnavido)をご覧いただき、今回は熱気に満ちた試合会場の様子をリポートしたい。

■一体感のある応援が実現

ホームの圧倒的な声援をバックに、開幕戦のパラグアイ戦に1-0と幸先の良い勝利を挙げた日本代表は、グループリーグ突破をかけて、第2戦のモロッコ戦に臨んだ。

グループリーグでは、平日の日本戦は仕事の後にも見られるようにという配慮でナイターに設定された。かなり冷え込んだが、半袖の代表ユニフォームを着たサポーターの姿もちらほら。足先の感覚がなくなるような寒さの中で、その気合いにはびっくり!

ゴール裏スタンドには選手1人1人の名前や激励の言葉を集めた横断幕、「ROAD TO RIO(今大会で優勝国は2016年リオデジャネイロパラリンピックの出場権を獲得できる)」の旗も揺れていた。

声がそろった「ニッポン!」コールは、サッカーの代表戦さながらで、気づくと私も一緒に手をたたいていた。今大会では、世界中でサッカー日本代表を応援する「ちょんまげ隊」の隊長である「ツンさん」こと角田寛和氏が応援に駆けつけたこともあり、一体感のある応援が実現したのだ。また、この日はサッカー日本代表のオーストラリア戦が同時刻に行われていたが、こちらの会場にも多くのサッカー関係者や記者が駆けつけた。

試合は25分ハーフ。モロッコは日本よりも一回り以上体格が大きい選手がほとんどで、威圧感たっぷり。しかし、日本は「1人が攻め、3人が相手カウンターに備えて守る」守備重視の陣形でモロッコに攻撃の隙を与えない。終わってみれば、50分間を通して日本が攻めていた印象だった。

特に迫力があったのは、開幕戦でゴールを決めた黒田智成選手のスピーディなドリブル。スピードに乗ったかと思うと足の裏を使ったターンで相手を置き去りにし、シュートまで持ち込む流れるような一連のプレーは滑らかで美しく、プレーが止まった際には大きな歓声が上がった(ボールに入っている鈴の音が聞こえなくなるため、プレー中は声援は禁止)。守備では、フィールドの選手全員が同じ身体の向きで、息の合ったゾーンディフェンスを見せた。選手達の頭の中には、ピッチで起きていることのイメージが完璧に描かれているようだった。

また、この試合で印象的だったのは、日本の選手がドリブルでモロッコのGKと衝突したシーン(GKは晴眼者)。日本のファウルだったが、そのGKは痛みに顔を歪めながらも、ディフェンスに戻る日本選手の元へ駆け寄り、声をかけながら熱いハグを交わした。試合中も対戦相手に敬意を払うフェアプレーが随所に見られ、見ていて清々しい気持ちになった。

■日本は過去最高の6位に

第3戦のフランス戦は、決勝トーナメントの相手が決まる重要な一戦で、会場にはモロッコ戦を上回る大勢の観客、メディアが詰め掛けた。勝てば首位通過。負ければ3位通過でブラジル(パラリンピック3連覇中の王者)と当たることになるため、なんとしても引き分け以上で試合を終えたい試合だった。

フランスはモロッコより組織力も個人技も上で、パスを回しながら試合を支配。しかし、日本はこの試合も持ち味の堅守速攻を見せ、逆に、残り7分となったところでPKを獲得。ここで、ロベルト泉選手の鋭いトーキックがゴールネットを揺らし、ついに先制! 待ち望んだ日本のゴールに、応援席では喜びが爆発し、一瞬スタンドが浮き上がるような感覚に陥った。しかし、その1分後にフランスにPKを決められ、結果は1-1のドロー。この結果、日本は史上初の決勝トーナメント進出を決めた。

目標のベスト4まであと一歩となった準々決勝で、日本はアジア最強の中国相手に善戦しながらも、0-0からのPK戦(1-2)で惜しくも敗戦。しかし、5位決定トーナメントではドイツに1-0と勝利。5位決定戦では再びパラグアイと対戦して、前後半0-0のまま終了し、3人制によるPK戦の結果、0-1で日本は敗れた。

この結果、日本の最終的な順位は6位に。2006年アルゼンチン大会の7位を上回る、過去最高の順位だ。
最終日の決勝戦はブラジルとアルゼンチンの対戦となり、延長戦の末、ブラジルが2連覇を達成した。

■障害者スポーツの枠を超えて注目

大会を振り返ると、会場ではブラインドサッカーの体験会や、障害のある方も試合観戦を楽しめるような環境づくり(音声ガイドサービス、触地図、手話通訳、補助犬用トイレ等)など、さまざまな取り組みの成果が見られ、今後の競技発展の可能性を感じさせてくれた。

特筆しておきたいのは、ブラインドサッカーが今、障害者スポーツの枠を超えて注目を集めているということだ。

視覚を塞ぐことで、より密で円滑なコミュニケーションが求められるため、企業の社員研修プログラムなどに取り入れられているという。会社内での役職や部署にこだわらず、信頼関係やチームの結束力を高めることにもつながる。外界の情報の8割を得ていると言われる視覚を塞いだ状況で、いかに相手とイメージを共有することができるか。お互いを思いやる想像力も養われるため、小学校などの教育の現場でも採用されているという。

そして、着々と強豪への道を進んでいるブラインドサッカー日本代表の今後の活躍に、引き続き注目していきたい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141127-00000100-spnavido-life

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コメント(1)

  1. ツンさんはモロッコ戦だけはいらしていませんでしたよ。さすがにその日はサムライブルーのほうに行ったそうです。

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    中村和彦

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