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「超快速」は北陸新幹線への刺客? 諦めない北越急行

「はくたか」に代わる新しいシンボルとして

新潟県の六日町駅と犀潟駅を結ぶ北越急行が2014年11月4日、来年3月のダイヤ改正から運転する「超快速列車」(仮称)の計画について発表しました。

北越急行は、越後湯沢駅で接続する上越新幹線と連携し、東京と北陸方面を結ぶ特急「はくたか」のルートになっている路線です。しかし2015年3月14日の北陸新幹線金沢延伸に伴い、役目を終える特急「はくたか」は廃止されます。

そこで北越急行は「超快速列車」を、「『はくたか』に代わり皆様に親しんでいただけるほくほく線のシンボルとなる列車」にするとしています。

計画されている「超快速列車」の運転区間は以下の通りで、両端でJR東日本線へ直通します。越後湯沢駅は上越新幹線との乗換駅で、直江津駅は新潟県上越地方の中心都市、上越市の主要駅です。

越後湯沢~(JR東日本上越線)~六日町~(北越急行ほくほく線)~犀潟~(JR東日本信越本線)~直江津

越後湯沢~直江津間の距離は合計84.2km。具体的な所要時間や停車駅は未定ですが、「超快速列車」は同区間を1時間で結ぶとしています。

「超快速列車」にうかがえる北陸新幹線の存在

この「超快速列車」には、ある思惑がうかがえます。北陸新幹線への対抗です。

北陸新幹線の金沢延伸に伴い、役目を終える特急「はくたか」は廃止されます。北越急行は、営業収益のうち実に約9割が「はくたか」の稼ぎでした。そのため同社の経営状況は、北陸新幹線によって非常に大きな打撃を受けることになります。

ただ北越急行もこれを想定した利益の積み立てを続けており、その額はNHKの報道によると2014年度末で130億円にのぼる見込みです。そしてこれを使えば、今後30年程度は経営を続けられると予測されています。しかし「貯金」を切り崩していくだけでは先が見えています。

「超快速列車」は、そこでただ北陸新幹線に乗客が流れるのを眺めているのではなく、対抗し、北越急行の状況を少しでも改善するための「切り札」として登場したと考えられるのです。

北陸新幹線が金沢まで延伸したのちも、北越急行が引き続き東京と北陸を結ぶ需要を取り込むことは困難でしょう。しかし、東京と新潟県第三の都市である上越市周辺を結ぶ需要であれば、北陸新幹線が開業しても北越急行に取り込める可能性があるのです。

「速達形」の停車しない上越妙高駅

上越市には北陸新幹線の上越妙高駅が設置され、新幹線「はくたか」が停車します。新幹線「はくたか」による東京~上越妙高間の具体的な所要時間は、まだ公表されていません。

国土交通省が2012年に試算した資料によると、停車駅が最小の「速達形列車」で東京~上越妙高間が1時間48分、東京~富山間が2時間19分としています。しかし2014年8月、速達形列車である「かがやき」は上越妙高駅を通過すること、その「かがやき」は東京~富山間を最短2時間8分で結ぶことがJR東日本・JR西日本から発表されました。

上越妙高駅に停車する新幹線「はくたか」は、速達形の「かがやき」より停車駅が数駅増えます。そのため東京~上越妙高間は、列車にもよると思われますが速達形で1時間48分という国交省試算より10分前後、所要時間が延びることが考えられます。

ただJRが発表した東京~富山間の所要時間が国交省試算より短縮されていることから、東京~上越妙高間の所要時間もある程度、減少することが見込まれます。

そのためあくまで仮定で、列車により差が出ると思われますけれども、新幹線「はくたか」は東京~上越妙高間を1時間50分~2時間程度で結ぶことが想定できます。

これを前提に、東京~上越妙高~直江津間を北陸新幹線で移動すると考えてみます。

上越妙高駅から上越市の沿海部にある主要駅、直江津まで行くには在来線に乗り換えて約15分必要です。その乗り換えに必要な時間を8分とすると、北陸新幹線で東京~直江津間を移動する場合、所要時間は合計でおよそ2時間13分から2時間23分程度となります。

仇敵に一矢報いる「超快速列車」

続いて、北越急行経由で東京~越後湯沢~直江津間を移動することを考えてみます。

現在、上越新幹線は東京~越後湯沢間を1時間10分から1時間28分で結んでいます。そして越後湯沢~直江津間は北越急行の普通列車で、列車にもよりますが1時間30分前後です。越後湯沢駅での乗り換え時間を8分とすると、東京~直江津間は合計でおよそ2時間48分から3時間6分程度となります。

ここで越後湯沢~直江津間を1時間で結ぶ「超快速列車」があったら、どうなるでしょうか。

北越急行経由の所要時間は、およそ2時間18分から2時間36分に大きく減少。これに対し、北陸新幹線経由の所要時間はおよそ2時間13分から2時間23分程度。つまり「超快速列車」を運転することによって、北越急行が北陸新幹線に対抗できる芽が出てくるのです。

しかも、東京~直江津間の運賃・料金は北陸新幹線経由の場合、東京~上越妙高間が9280円、上越妙高~直江津間が240円の合計9520円です。ですが北越急行経由の場合は東京~越後湯沢間が6670円、越後湯沢~直江津間が1380円の合計8050円と、1470円も安くなっています(普通車指定席・通常期)。

このように北越急行が計画している「超快速列車」は、同鉄道の経営を悪化させる北陸新幹線から乗客を獲得し、同鉄道の経営状況を改善するため送り込まれる「刺客」と考えることができるのです。

上越市は973.6平方キロメートルと東京23区の約1.5倍という広さがあり、上越妙高駅のほうが便利な場合も多いと思われます。とはいえ直江津駅のほうが便利である、多少でも安いほうが良いという場合が存在するのも確かです。「超快速列車」がその需要をいかに取り込み、北陸新幹線に一矢報いて北越急行の経営悪化を抑えられるか、その働きが注目されます。

恵 知仁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141110-00010000-norimono-l15

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141110-00010000-norimono-l15&p=2

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