遺伝子研究が進む乳がん。がんの遺伝子タイプを調べ、薬物療法は個別化される時代に。最適な薬の選択が可能になることで、より高い効果が期待される。開発中の新薬も紹介。
1.乳がんの薬物治療
遺伝子の研究が進んだことで、乳がんはその特徴により5つのタイプに分けられることがわかってきました。現在は、皆一律に同じ治療をするのではなく、タイプによって、薬を使い分けたり、手術前にも薬を使う術前化学療法が検討されたりします。また、タイプごとの特徴に合わせた新薬も次々と開発されています。
乳がんのタイプを調べる遺伝子検査は現在まだ高価なため、がん細胞の病理検査に基づいて、がん細胞の種類や性質などを調べてタイプ分けし、治療方針を決めるのが一般的です。以前は手術のときに摘出したがんの組織から調べていましたが、現在は手術前に病変の組織を一部採って調べる針生検が主流です。
2.タイプによる薬の使い方
乳がんは、女性ホルモンのエストロゲンの刺激で増えるルミナルA(HER2陰性)、ルミナルB(HER2陰性)、ルミナルB(HER2陽性)と、女性ホルモンでは増えずHER2というたんぱくが過剰に現れることで増えるHER2陽性、どちらのグループにも属さないトリプルネガティブの5つのタイプに分けられます。
乳がんの7~8割はルミナルと名前がつく3つのタイプのグループに入り、エストロゲンを減らすホルモン剤が効果的です。ルミナルAは増殖能力が低く穏やかなタイプで、使う薬はホルモン剤だけでよいとされますが、ルミナルBは増殖能力が高く、ホルモン剤に加えて抗がん剤も使います。トリプルネガティブは、抗がん剤のみで治療を行います。ルミナルB(HER2陽性)とHER2陽性には、抗HER2薬という分子標的治療薬と、抗がん剤を用いて治療します。
このように、タイプに応じた薬が用いられるようになった結果、治療成績が向上しただけでなく、使う薬が絞られて体への負担も軽減しています。
☆ 薬の使い分けの具体例、術前化学療法、新薬については、
きょうの健康テキスト 10月号に詳しく掲載されています。
NHK「きょうの健康」2014年10月15日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20141015-h-001.html