塩分を控えめにしたインスタントスープや即席麺などが充実してきた。健康志向の高まりから、減塩加工食品を求める声は高まっており、食品メーカーは塩分を減らす一方、うま味や香辛料で味を工夫している。
■高血圧の予防に
塩分をとりすぎると血液中のナトリウム濃度が上がり、喉が渇く。水分を多くとると、血液量が増え血圧が上昇する。高血圧状態が続くと血管は厚く硬くなり、動脈硬化につながる。動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなる。このため、高血圧の予防には「減塩」が重要だ。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、1日あたりの食塩摂取目標量を18歳以上男性は8グラム未満、同女性は7グラム未満としている。
だが、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)生活習慣病部門長の河野雄平医師は「日本人の塩分摂取量は減少傾向にあるが、世界的にはまだ多い。欧米で推奨されている1日あたり6グラム未満が望ましい」と話す。家庭の食事で塩分摂取量を減らすことが重要だとして、「減塩の調味料や加工食品を用いることは有効な手段の一つ」(河野医師)ともいう。
■市場規模は拡大
消費者の間でも減塩食品に対するニーズは高まっている。調査会社の富士経済によると、13年の減塩食品全体の市場規模は、前年比7・3%増の424億円。14年は同5・4%増の447億円となる見込みで、市場は拡大傾向にある。
食品メーカー各社は、そのニーズに応えるため、味を工夫した様々な商品を発売している。
味の素は、「クノールカップスープ コーンクリーム 塩分40%カット」を8月に発売した。同シリーズ初の減塩商品で、従来品より塩分を約40%カットした。アミノ酸などのうま味成分の配合を調整し、減塩によって損なわれる風味を補っているという。
ポッカサッポロフード&ビバレッジの「一杯の減塩わかめスープ」(8月発売)は、昨年秋に発売した減塩商品を刷新したものだ。あさりやほたてなどの貝だしの味に加え、わかめの風味がより感じられるよう原材料の配合割合を変更。甘みを減らし、すっきりとした塩味に仕上げた。塩分は従来品より約20%カットした。
■共同開発も
健康機器大手のタニタと共同開発しているのが、マルコメの「FDタニタ食堂監修 減塩みそ汁」(9月発売)だ。同社が昨年9月に発売した減塩シリーズの新製品で、みそと具材を一緒に凍結乾燥させたフリーズドライタイプだ。みそは、同社の通常商品よりも麹こうじを約2倍配合。甘味とコクのある味に仕上げ、塩分は従来品よりも約10%カットしている。
エースコックの「だしの旨うまみで減塩 鶏炊きうどん」(3月発売)は従来品を刷新したもので、塩分カット割合を25%から30%とした。味の基本である塩分を減らすと、薄味になってしまうため、「だし」と「香辛料」の配合量を工夫した味に仕上げたという。(宮田大輔)
(2014年11月1日 読売新聞)
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