目的
電気や火を使わず、ボタンを1回押すだけで噴射された薬剤が、長時間にわたり蚊を駆除するタイプの蚊取り剤(以下、「ワンプッシュ式蚊取り」という。)が販売されています。この商品は、従来の蚊取り剤(蚊取り線香、マット式蚊取り、液体式蚊取り、ファン式蚊取り)のように、薬剤を熱や風力によって大気中に徐々に拡散させるのではなく、一日分の使用量に相当する薬剤が、ワンプッシュで放出されるようになっています。
PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、2009年4月以降(2014年6月末までの登録分)、置き型のワンプッシュ式蚊取りによる危害情報が7件寄せられており、その中には「顔にかけてしまい、両頬が赤くなり、やけどのような痛みが出た。」などの報告があります。
また、「平成24年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」(厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室)の吸入事故等に関する報告の中では、「一度の噴射で長時間効果が持続するバリアー用エアゾール(ワンプッシュ式蚊取り等)の報告件数が平成22年度26件、平成23年度52件、平成24年度73件と著増している。」と報告されています。吸入事故等に関する報告のデータを収集した公益財団法人 日本中毒情報センターによると、「ワンプッシュ式蚊取り」に限って集計した場合の報告件数は、平成20年度3件、平成21年度9件、平成22年度26件、平成23年度51件、平成24年度73件とのことで、平成24年度の報告では、子どものいたずらによるものが52件(71.2%)と多く、そのうち42件に症状が出現していたとのことです。
そこで、蚊取り剤を使用する機会が増える夏場にあたり、置き型のワンプッシュ式蚊取りによる被害の未然防止のため消費者に注意喚起を行うこととしました。
ワンプッシュ式蚊取りとは
現在、販売されているものには手に持って前方に噴射できるスプレー式タイプと、置き型で上方に噴射できるタイプがあります。そのどちらも、従来のスプレー缶のようにボタンを押し続けても、薬剤が噴射し続けることはなく、1回ボタンを押した際に、一定量の薬剤が噴射されるようになっています。
本体の機能等
- 全ての銘柄で、押しボタンと噴射口は本体上方にあり、噴射方向はななめ上向きでした。押しボタンに「PUSH」表示のないものがあり、噴射口には全ての銘柄に噴射方向等の注意表示はありませんでした(写真)。
写真.顔にかかってしまう一例(写真は子どもが誤って噴射した場合を想定)
- 全ての銘柄で横方向に約60~70cm、縦方向に約100~110cmの位置まで噴射されることがわかりました。
- 全ての銘柄に誤噴射防止ロックがあり、誤噴射防止ロックを「LOCK」側にすると、全ての銘柄で、押しボタンを押しても薬剤は噴射されませんでした。しかし、一度「OPEN」側にすると「LOCK」側に戻すまでは、押しボタンを押すことが可能でした。
消費者へのアドバイス
- 噴射する前に、噴射の方向をよく確認しましょう。
- 子どもが一人で使用しないように注意しましょう。また、使用しないときは誤噴射防止ロックを「LOCK」の位置にして、子どもの手の届かない場所に置きましょう。
- 身体に異常が起きた場合は、医師の診断を受けましょう。
業界への要望
置き型のワンプッシュ式蚊取りによる事故を防ぐために、誤噴射防止ロックの改良など、より安全な装置の開発や更なる啓発を要望します。
要望先
- 日本家庭用殺虫剤工業会
情報提供先
- 消費者庁 消費者安全課
- 内閣府 消費者委員会事務局
- 厚生労働省 医薬食品局 審査管理課 化学物質安全対策室
- 公益財団法人日本中毒情報センター
動画
業界の対応 ※2014年10月27日 追加
「日本家庭用殺虫剤工業会」より
先般8月7日付にてご送付頂きました首記にて、ご指摘ご指導頂きました内容について真摯に受け止め、早速当工業会技術部会を開催し、以下の通り対応させて頂くことに決定致しましたので、ご報告申し上げます。
- 日本家庭用殺虫剤工業会が制定している“「医薬品殺虫剤等の添付文書(製品表示)」作成のガイドライン(自主基準)<平成13年7月制定、同18年4月改定>”に新たに「ワンプッシュ蚊取り」項を新規に設け、ご指摘点((1)噴射方向の明確化、(2)誤噴射防止ロックの適正利用、(3)子供の手の届かない場所に置くことの注意喚起)を含め反映させる。
- 「置き型ワンプッシュ蚊取り」を製造販売している当工業会会員各社は、事故原因の解析を元に、噴射方向の明確化、誤噴射防止ロックの改良等、可能な限り速やかに、より装置の使用上の安全性を高めるよう、改良・改善を行う。
- 「置き型ワンプッシュ蚊取り」を製造販売している当工業会会員各社は、商品表示、TV等コマーシャルを実施する際、各社ホームページ上、等、消費者が正しい使い方を身につけられるように、ご指摘点((1)噴射方向の明確化、(2)誤噴射防止ロックの適正利用、(3)子供の手の届かない場所に置くことの注意喚起)を含め同製品の注意喚起を併せて実施する。
日本家庭用殺虫剤工業会
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20140807_1.html