美容外科などのホームページ(HP)上の「広告」を巡り、トラブルが相次いでいる。
国民生活センターによると、2004年度には全国で11件だったインターネット広告に関する苦情相談が、昨年度は340件に上った。HPで「低料金」を掲げる美容外科で、半ば強引に高額の手術を受けさせられたというケースが多い。消費者団体が大手美容外科にHPの一部削除を求める動きも出ている。
顔のしわの解消や二重まぶたにする手術が数千円から数万円、医師による十分なカウンセリングが受けられ、手術後のアフターケアも無料――。ある美容外科のHPでは、手術が低料金で安心して受けられると強調されている。
国民生活センターは「美容整形を受けたことを周囲に明かす人は少ない。ほとんどの人が『口コミ』ではなく、ホームページで美容外科を選んでいるが、トラブルも多い」と分析する。
同センターに寄せられる典型的な相談は次のようなものだ。HPで低料金の美容外科を選んで訪れると、「安い手術では効果が長続きしない」と言われ、高額な手術か複数の手術の組み合わせを勧められる。難色を示すと、「今日は割引ができる」と段階的に料金を下げ、密室で数時間にわたり説得される。中には、カウンセリングだけのつもりで来たのに、当日に数百万円の手術を受けることになった人もいるという。
国が認定する適格消費者団体「消費者機構日本」(東京)はこうした現状を問題視し、美容外科のHPなどの集中調査を実施。今月8日、全国19か所で「品川美容外科」を運営する医療法人「翔友会」(同)にHPの改善を申し入れた。適格消費者団体は消費者契約法に基づき、消費者トラブルの被害者に代わり、不当行為を行う事業者に改善を要求したり、訴訟を起こしたりすることができる。
同団体は、品川美容外科がHPで「会員になれば20%オフで手術を受けられる」としていることについて、入会金・会費が無料で当日入会が可能なため、非会員価格で手術を受ける人はほとんどいないとして、著しく安いと勘違いさせる景品表示法違反の「有利誤認」にあたると主張。さらに、「症例実績400万件以上」「紹介・リピート約90%以上」などの記載についても、裏付けとなるデータを示すよう求めている。
翔友会は「回答期限の今月末までに適切な対応をしたい」としている。
「ネット上の美容医療に関する広告は事実上、野放し状態にある」。消費者機構日本の磯辺浩一専務理事はそう指摘する。
医療法は保険適用外の自由診療について、薬事法で認められた医療機器や医薬品を用いる手術以外の広告を禁じている。美容外科の手術のほとんどは広告できないが、HPが“抜け道”になっている。
HPが広告とみなされるのは、医療機関が料金を支払ってバナー広告や有料サイトにリンクさせることで、閲覧者をHPに誘導しているケースに限られており、リンクさせなければ規制は受けない。
(2014年10月27日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=107227