子どもの食べ物の好き嫌いは、保護者にとって悩みの種。苦手な食材が多いと献立が偏りがちになり、栄養面も心配だ。そこで、味覚や食べ物の嗜好(しこう)に詳しい関西国際大学教授の堀尾強氏に、好き嫌いはなぜ起こるのかを聞いた。
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人間が食べ物を食べた時に感じる、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つの「味覚」。この味覚が、その食材が身体に有益か、有害かを伝えるシグナルの役割を果たしています。
<味覚が伝えるシグナル>
甘味……エネルギー源
塩味……ミネラル
酸味……腐ったものや未熟なもの
苦味……毒
うま味……タンパク質
甘味・塩味・うま味は、生きるために必要不可欠なもののシグナルで、私たちは自然とその食べ物を好むようになっています。一方、苦味や酸味は、毒物や腐敗物など有害なものを判別するためのシグナルだと考えられています。したがって、子どもが甘いものや塩味のものを好み、苦みの強いピーマンや酸味の強い酢の物を嫌うのは本能的な行動といえます。
好き嫌いができる理由には、これ以外にも環境的な要素があります。たとえば、母乳やミルクしか飲んでいなかった赤ちゃんが、新しい食べ物に挑戦することは不安や恐怖を伴います。新しいものを食べた時にお腹が痛くなるなどの経験をすると、その食べ物を嫌いになります。反対に食べた時に満足感が得られると、その食べ物への嗜好が増すことが実証されています。
最近の研究では、小さいころからいろいろな食べ物の経験が豊富な子どもほど、新しい味への許容度が高いことがわかってきています。胎児も、味を感じる「味蕾(みらい)」という舌の器官が機能し始める妊娠3か月のころから、胎盤を通じて食べ物の味を感じています。母親のお腹の中でさまざまな味に触れることも、新しい食べ物への許容度を高めます。子どもの好き嫌いを少なくするには、妊娠中や授乳期間中に、母親がいろいろなものを味わっておくことが望ましいでしょう。
http://news.goo.ne.jp/article/benesse/life/benesse-16862.html