脳内物質に注目
体内リズムに合わせて規則正しい生活を送ることが、糖尿病防止や改善につながることを、富山大大学院医学薬学部の笹岡利安教授(54)と恒枝(つ ねき)宏史准教授(49)の研究グループがマウスの実験で突き止め、23日付の米科学誌「ダイアベティス」電子版に掲載した。(広田和也)
笹岡教授らは、目覚めと眠りを制御する脳内物質「オレキシン」に注目。目覚めや空腹時に分泌され、就寝にかけて濃度が下がるオレキシンが、体内リ ズムに合わせて正常に働くことで血糖値を大幅に下げることを証明した。これまで体内リズムの乱れが糖尿病を引き起こす要因の一つとして知られていたが、詳 しい原因は不明だった。
実験では、糖尿病のマウスの脳にオレキシンを毎日同じ時間に投与し、血糖値の変動リズムを約二週間観察。目覚め時に与えたマウスは血糖値が大幅に 下がり、それまで乱れていた血糖値の変動リズムも改善した。一方、睡眠中のマウスに投与しても血糖値はほぼ下がらず、高血糖状態が続いて一定のリズムも生 まれなかった。
今回の実験では、規則正しい生活を送ることが、食事で取ったエネルギーを消費したり蓄えたりする肝臓の糖代謝を促し、インスリンが効きにくくなるのを防ぐことも明らかにした。
今後、インスリンに変わる糖尿病の新薬開発や、体内リズムに合わせて薬を投与する「時間治療」にも応用できるという。笹岡教授らは「高齢化やストレス社会が生む生活習慣病に対応した創薬につながれば」と話している。
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2014092502100003.html