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ジェルボールなど第三の洗剤の事例から「子どもと事故」について考える

ジェルボール型の洗剤が今年の春に発売になりました。第三の洗剤として、販売会社側の期待を集めています。

また、販売開始後、その見た目からゼリーなどと誤って洗剤を食べてしまった子どもが多く見られたことで、ニュースにもなりました。

幸い大きな健康被害はこれまでに報告されていませんが、子どもたちの健康は、思わぬところで脅かされると改めて感じた方も多かったのではないでしょうか。

事実、家庭や日常生活の中で起きた「事故」によって、子どもたちの健康は大きな影響を受けています。

今回は、「子どもと事故」について考えてみたいと思います。

※本記事の中の「事故」は交通事故とそれ以外の自宅や外出先で起きた事故(窒息、溺水、誤飲、中毒、やけどなど)の両方を含みます。

 

たかが事故、ではない

下の図は、オランダからの報告です。1991-1995年の間の0-14歳の子どもたちの事故による死亡1件に対する、入院、救急外来受診数の比を示しています。

1件の死亡事例が生じるとき、その背景に160の事故による入院事例があり、2000の事故による救急外来受診があります。その状況を氷山の一角としてイラストで示しています。

これはあくまで頻度の話ですが、1つの死亡事例を防ぐためには、その背景に潜む小さな事故の積み重ねにも注意を払うべきだという重要なメッセージを含んでいます。

ジェルボールの誤飲のような、少量の洗剤を飲んでしまったという事故で、大きな健康上の問題が起きる可能性は低いかもしれません。(注:もちろん、飲んでもよいという意味ではありません)

しかし、そうした小さな事故の積み重ねを見落とさない社会づくりが、子どもたちの健康を考えたときには必要なのです。

 

先進国における「事故による死亡」

国が豊かになれば、子どもたちの死亡率は減少します。しかし、「事故」に関しては、そのスピードが緩やかであると指摘されています。

下のグラフは、ユニセフがまとめたものです。

経済協力開発機構(OECD)諸国(チェコ、ドイツ、韓国、トルコを除く)における1-14歳の事故による死亡と、その他の原因による死亡(病気など)を10万人あたりの死亡者数を用いて、1971-1995年の間で比較したものです。

題あり

出典:文献4

1971-1995年の間、子どもの死亡率は著しく減少しました。しかし、減少が目立つのは、事故以外の原因による死亡率(薄紫色の部分)です。事故による死亡率(濃い紫色の部分)の減少は緩やかです。

そして、1971年における「子どもの死亡率全体」に対する「事故による死亡率」が占める割合が25%であったのに対し、1995年の時点ではその割合は37%に上昇しています。

このことは、現在の先進国における子どもたちの健康を考えたときに、「事故」への対策がより重要になってきていることを示しています。

実際、OECD諸国全体において現在、年間約2万人の子どもたちが事故によって命を落としているといわれています。(文献4)

日本の年齢別死因も、これらの結果に一致します。平成25年の人口動態統計の結果を以下に示します。

14まで

乳幼児、小児の死因の上位を「不慮の事故」が占めています。「事故から子どもたちを守る」ことは、先進国が取り組むべき重要な課題の一つなのです。

日本でも、消費者庁厚生労働省が事故予防の大切さを訴えています。

 

事故から子どもたちを守る

病気や先天奇形などによる死亡と事故による死亡の決定的に違う点は、「不慮の事故」は大人の注意である程度防ぐことができるということです。

子どもの事故の経験をした保護者の80%以上が「少しの気配りをすることで、事故を防ぐことができた」と回答しています。(文献1)

子どもたちは発達とともに色々なものに興味を示し、手に触れたり口に運んだりします。その成長はとても嬉しいことですが、いろいろできるようになるということは、事故のバリエーションも増えるということを忘れてはいけません。

それぞれの成長段階で注意すべきことは、「子どもに安全をプレゼント」というサイトにイラストを交えて詳しく載っています。また、小児科学会も、「Injury Alert(傷害速報)」をホームページ上で公開していますので、ぜひ一度参考にしてみてください。

 

ジェルボールの話に戻りますが、今後日本での洗剤全体に占めるシェアが伸び、20%程度と欧米並みになれば、事故の件数は増えるでしょう。

2010年からジェルボールが国内販売されるようになったアメリカでは、2012年の時点で1008件/月の洗剤誤飲報告があり、そのうち485件(48%)がジェルボールに関わるものだったということです。(文献2)

2001年から販売されているイギリスでも、洗剤に関わる事故原因の最も多くをジェルボールが占めているとのことです。(文献3)

これらの前例を踏まえ、日本でも洗剤は常に子どもの手の届かない場所に置くなど、扱いには注意が必要です。

経済的に発展し、モノであふれる先進諸国において今、子どもたちが安全に暮らせる社会づくりの必要性が改めて問われています。

http://credo.asia/2014/09/21/gelball/

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