キッズルームなど設置 入居者の交流広場も
賃貸マンションや団地で、子育て支援に取り組む物件が増えている。敷地内に保育施設を開いたり、安全に配慮した設備にしたり。安心して子育て期を過ごしてもらい、入居者の定着を図りたいという狙いがある。
東京都足立区の「ハートアイランド新田」は都市再生機構(UR)の団地で、「乳児から就学児まで切れ目ない支援」をテーマに、乳幼児向けキッズルームや保育所、学童保育がそろう。
キッズルームはNPO法人の運営。スタッフが常駐し、子どもの遊び相手や母親らの相談相手になる。地域住民も利用できる。2歳の息子と毎日通う母親 (38)は「遊ぶ場所に困らず、情報交換や友達もできる」と喜ぶ。朝夕は「幼稚園送迎ステーション」となり、バスが来る前後の時間に園児約20人を有料で 預かる。
URは3年ほど前から子育て支援を本格化。既存物件を対面キッチンに改修したり、空き部屋を保育施設にしたり。今年7月には全国190団地で、子どもの年齢や所得を条件に、家賃が最大2割減額される「子育て割」も始めた。
団地は高齢化が進み、世帯主の平均年齢は4年前で56・8歳。担当リーダーの間瀬昭一さんは「子育て世帯のニーズに応え、多世代が共生する団地を再生したい」と話す。
子育て世帯向け賃貸物件は広がっている。旭化成ホームズ(東京)の「ヘーベルメゾン母力(ぼりき)」は、入居者同士が積極的に交流できるよう広場を設け、子育て支援団体の協力を得てイベントを開くなどしている。
スターツCAM(同)が首都圏を中心に27か所展開する「アリア・ソワン」はミキハウス子育て総研(大阪市)などと共同で企画。ベランダの鍵を小さな子が 開けにくい「チャイルドロック」にする、柱の角を丸くするなど安全面の配慮があり、洗面台に収納を兼ねた踏み台を付けるなど工夫も凝らされている。スター ツCAMの福丸敦之さんは「子育てを重視することで、より個性的な物件を開発できた。家賃が数千円高いものもあるが、入居率は一般向けを上回っている」と 話す。
リクルート住まいカンパニーの「SUUMO(スーモ)」編集長、池本洋一さんによると、賃貸市場は供給過剰で空室率が高く、長く住 んでもらうことが課題になっている。子育て世帯は、住まいの安全性やほかの入居者との関係などを重視する人が多く、気に入ると、長く住む傾向がある。「子 育てを通じて入居する家族同士が親しくなり、コミュニティーができやすい。人のつながりができると、物件全体として長期的な入居が期待できる」と池本さ ん。
既存の賃貸マンションで、子育てに向く物件を認定する動きもある。ミキハウス子育て総研は「ベランダから転落しない工夫」「床・壁の 防音性能」「交通量の多い道路がすぐそばにない」など80項目のうち50項目以上を優良とし、これまで3000戸ほど認定した。横浜市も民間の賃貸住宅で 子育てしやすい物件を認定しており、入居する世帯に一定条件で家賃を補助する。(大石由佳子)
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