広島の大規模土砂災害から20日で1か月となりました。あの災害から何を教訓として学び、それを今後の備えにどう生かしていくのか。現地では容赦なく破壊されてしまった生活をどう立て直していくかが大きな課題となっています。
最も多くの人が亡くなった、安佐南区の八木地区です。いまだにがれきや土砂が積まれたままです。そして20日も多くのボランティアが宅地の土砂などを撤去していました。
52人が亡くなった安佐南区の八木地区では、線香や花を手向けて犠牲者を悼む住民の姿もありました。住宅周辺の土砂やがれきの撤去作業が続いていますが、1か月がたっても自宅に戻れない人も多くいます。
「とにかくさみしい、人がいない」(住民)
広島市の松井市長が復旧作業を確認するため、現地を視察しました。
「(被災ケースを)1つ1つ検証して、支援策・救済策を考えたい」(広島市 松井一実 市長)
住宅被害は4500棟にも上っていて、被災者の中には自宅に住み続けるかどうか悩んでいる人も多くいます。生活再建に向けたある団地での動きを追いまし た。4人が犠牲になった安佐南区八木の阿武ノ里団地では20日朝、死亡した兄夫婦の家の前で手を合わせる男性の姿がありました。
「安らかに眠ってもらいたい。(1か月は)早いね、仕事が前に進まない」(立川新三さん)
立川さんも住むこの団地には、80世帯ほどが暮らしていました。土砂災害で4分の1にあたる20軒の住宅が全半壊したほか、多くの住宅が被害を受け団地を離れる住民もいました。地域の世話役を務める土井智之さんは、住民の心の揺れを感じ取っていました。
「(住民は)この場所で暮らせるのか、移らないといけないのかに関心」(土井智之さん)
住民の多くは安全対策に関する行政側の考えを踏まえて住み続けるかどうかを判断したいと考えています。しかし、広島市は先週、団地に残る住民の数がわかってから対策を検討すると説明しました。
「(住民が団地を)出るか出ないかで、街づくり計画を策定するというのは、逆ではないか」(土井智之さん)
19日、国と広島県が被災地などの31か所に砂防ダムを整備すると発表しました。団地に土石流をもたらした沢にも再来年の春までに完成する予定です。
一方で今週、広島県が公表した災害前の調査結果では、特に大きな被害が予想される特別警戒区域に含まれる住宅はわずか1軒だけでした。
「もう1度、調査(と対策を)して、安心して住めるようにしてほしい」(住民)
住民同士の親睦会など様々な行事が開催され、にぎやかだったという阿武ノ里団地。ここで生まれ育った土井さんらは、近隣の自治会と共同で避難計画を立てるなど、住民自らによる防災態勢の整備に取り組み始めました。
「(団地を)復活させたい。ふるさとだから」(土井智之さん)
不安を抱えながらもふるさとの再生に向け歩み始めた住民たち。阿武ノ里団地の復興はこれからが正念場です。
一方で今もおよそ70人の被災者が小学校などで避難所暮らしを続けています。そして広島市が借り上げた住宅などに入居した被災者も将来までは保障されておらず、住まいの確保が大きな課題となっています。(20日16:36)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2303385.html