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法科大学院、ランク付け 補助金減へ5分類 文科省

法科大学院への補助金を実績などに応じて見直すため、文部科学省は19日、これまでの司法試験の合格率などを基に法科大学院を5段階に分け、公表した。最下位ランクの7校は上位ランクの大学院と連合しないと、2015年度の補助金が半減し、16年度はゼロになる。

■最下位7校、半減も

募集を停止したなどの22校を除く52校が対象。司法試験の「累積合格率が全国平均以上なら12点」「全国平均の半分未満が3年連続したら0点」など合格率や直近の入学定員の充足率など五つの指標を点数化した。

最上位ランクの大学院は、従来支給されてきた補助金の90%、2番目は80%などを基礎額とする。ただ、「早期卒業や飛び入学を活用した優秀者養成コース」「企業や自治体と連携した就職支援」など、ランクに応じて教育内容を充実させれば加算される可能性がある。9月末までに提案し、有識者の審査委員会が年内をめどに評価を決める。

補助金の傾斜配分は成績不振校の連合と質の向上を図るねらいで、文科省が昨年11月に決めた。今年の司法試験で法科大学院修了者の合格率は21・19%で、法科大学院を経ずに受験資格が得られる予備試験合格者の合格率66・80%との差が際だつ。4校は合格ゼロで、全体の平均(22・58%)の半分に満たない大学院も35校にのぼった。(片山健志)

■「募集停止進む」法務省幹部歓迎

「募集停止を決断する法科大学院がさらに増えるだろう」。ある法務省幹部は文科省のランク付けが成績不振校の「退場」につながると歓迎する。「法科大学院は法律家を育てるのが役割。司法試験の合格者を出せないなら閉鎖も当然だ」

ランク付けは、過去3年間の司法試験の合格率などに基づく。一橋大の79・5%を最高に15校が5割を超えたが、16校は2割未満にとどまった。「人材や教員が集まらず、環境も不十分なためで、法科大学院が74校もできたのは多すぎた証拠だ」と指摘する。

政府の法曹養成制度改革推進会議は来年夏までに、法科大学院や予備試験の今後のあり方をまとめる。成績不振の法科大学院は、修了生に司法試験の受験資格を与えない法的措置も検討されている。

■下位校「崖っぷち」/生き残りかけ連携

「学生に六法全書を擦りきれるほど読ませるような指導が必要だ」

文部科学省が19日に公表した5段階の「ランク付け」で、明治大(東京都)は、補助金4割カットに相当する下から2番目だった。この日の法科大学院の定例会議で、教員らが危機感をあらわにした。「まさに崖っぷち。司法試験合格率を上げるのが一番の対策だ」。河内隆史・法科大学院長は、ため息交じりでそう漏らした。

今春の定員充足率が29%だったのが影響した。併願者の多くがほかの法科大学院に流れたという。今年の司法試験合格率は全国平均を約4ポイント下回る17・3%だった。河内大学院長は「法学部出身者以外を活用する『多様な法曹』という理念を持って、司法試験と直接結びつかない講義もした。理念にこだわり過ぎず、合格率を重視すべきなのか」。

九州大は上から2番目のランクだが、田淵浩二・法科大学院長は「今の教育力をストレートに反映しているわけではない」と冷静だ。多様な人材を求めた司法改革の目的に沿って法学既修者コースを当初は設けず、合格率で上位校に差をつけられたという。

九大法学部から法科大学院に入った男性(23)は「上昇志向の強い人は東京をめざす。いい先生も関東に集まる」。修了生の男性(24)は「そもそも法科大学院制度が失敗。(ランク付けは)退場ありきの仕組みだ」と冷ややかだ。

ランク上位は大都市圏の大学が目立つが、地方大学も「善戦」する。

3番目のランクに入った琉球大(沖縄県西原町)は、沖縄県で唯一の法科大学院として「地域密着」を掲げる。講義には沖縄弁護士会の若手が参加し、受験生に実践的なアドバイスをする。地元の沖縄銀行は毎年秋に修了生を雇って勉強に集中させ、5月の試験終了後に働いてもらう制度を導入している。今年の合格者3人はいずれも沖縄銀が採用した修了生だった。担当者は「地方の国立大が苦戦するなか、まずまず健闘できた」。だが、「一定の合格者を出すのはしんどい。しばらくは厳しい競争が続く」とも話す。

2~4番目のランクの大学は、他大学と連携や連合をすれば加点要素になる。同志社大(京都市)は、京都大(同)と連携を考えている。来年度から互いの授業を受けられるようにし、質向上を目指す。占部裕典司法研究科長は「小中規模の大学は人数が少なく、司法試験合格率が大きく変動する。長期的、客観的な評価ができているのか」。

最下位ランクの駒沢大(東京都)。14年の司法試験合格率は4・3%で、3年連続で10%を切った。對馬(つしま)直紀・法曹養成研究科長は「合格率だけでなく、教育プロセスも評価してほしい」と話す。

■司法試験の改革を

<法曹養成制度に詳しい京都大名誉教授の棚瀬孝雄弁護士(現代司法論)の話> 小規模で合格率も低いと大学院としての教育が成り立たず、公的支援の見直しはやむを得ないだろう。

ただ、社会に入り込める法律家を育てる当初の理念と、予備試験を残して受験主義になった制度とのずれが大きい。

自ら社会の問題に取り組む法科大学院ならではの学びを、司法試験での評価に反映させるような改革が必要ではないか。

■補助金の見直しに向けて5段階に分けた法科大学院の一覧

基礎額/加算率/該当校数

該当大学

90%/+5~20%/13校

北海道、東北、筑波、東京、一橋、名古屋、京都、大阪(以上国立)

学習院、慶応、上智、中央、早稲田(以上私立)

80%/+5~50%/7校

千葉、横浜国立、神戸、九州(以上国立)

成蹊、創価、愛知(以上私立)

70%/+5~50%/5校

岡山、琉球(以上国立)

立教、同志社、甲南(以上私立)

60%/+5~50%/20校

金沢、静岡、広島、熊本(以上国立)

青山学院、東洋、日本、法政、明治、神奈川、山梨学院、中京、南山、名城、立命館、関西、近畿、関西学院、西南学院、福岡(以上私立)

50%/+50~60%/7校

北海学園、国学院、駒沢、専修、桐蔭横浜、愛知学院、京都産業(以上私立)

(学生募集を停止した7校、15年度の募集停止を表明した13校、国の補助金を受けていない公立の2校は除く)

http://news.asahi.com/c/agwqbCzP6v39qwa3

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